研究実績の概要 |
低酸素を用いた培養は,短時間かつ簡便に移植幹細胞の組織再生能力を増強することのできる有用な方法で、特殊な技術を必要とせず、脂肪幹細胞を用いた皮膚・血管再生医療の臨床応用に大いに貢献できると考えられる。また、低酸素下での制御機構を解明することにより、虚血・低酸素下における移植された脂肪幹細胞の未知なる動態の一面を明らかにすることで、脂肪幹細胞の再生医療研究に新しい発展を導く基盤となる。 脂肪幹細胞の低酸素下での増殖能・分化能・遊走能、血管新生能の変化を以下の方法で検討した。ヒト脂肪組織を採取後、十分に洗浄し,コラゲナーゼタイプⅡにて40分40℃にて震盪させ、組織を消化する。消化終了後,基礎培地を加えて1,600rpm 3minにて遠心分離を行い、3回十分に洗浄した後、下部に沈殿した細胞ペレットを新しい基礎培地に移して攪拌し、細胞群である脂肪幹細胞を得た。脂肪幹細胞の増殖度をMTTアッセイ、DNA合成能をBrdU取り込みアッセイで検討をおこない、低酸素環境で脂肪幹細胞が有意に増殖促進することが明らかになった。また、培地中に産生される血管新生因子をELISAで測定し、mRNAの発現をリアルタ イムRT-PCRで解析したところ、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生とmRNAの発現が低酸素環境で有意に促進していた。転写因子である低酸素誘導因子(HypoxiaInducible Factor、HIF)の発現をウェスタンブロッティングで測定したところ、低酸素48時間で発現亢進がみられた。
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