研究課題/領域番号 |
17K11564
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中山 慎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60596443)
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研究分担者 |
田口 典子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90569774)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳浮腫 / 心肺蘇生 |
研究実績の概要 |
心肺停止・蘇生後に起こる脳浮腫の根本的な治療法は確立されていない。虚血後に脳内で発現するスルホニルウレア受容体はNaイオンを細胞内に流入させるため、引き続く水の流入により細胞が膨張して死に至る。拮抗薬であるグリベンクラミドは動物実験で脳梗塞後の浮腫を50%軽減させた。心停止後の脳浮腫に対するグリベンクラミドの効果は調べられていない。マウス心停止モデルを用いて、蘇生後のグリベンクラミド投与が脳浮腫を低体温療法と同等に軽減するという仮説を検証した。 【方法】マウス(オス、体重20-28g、C57bl/6)に全身麻酔後、気管挿管し人工換気した。中心静脈からカリウムを注入し心停止を誘発し、心停止時間6分後から人工換気、アドレナリン投与、1分間に300回の心臓マッサージを行い蘇生した。治療群を4群に分けた。① 蘇生後に体温を36℃以上に保ち生理食塩水(NS)を投与した群(CPR+NS)② 蘇生後に体温を36℃以上に保ちグリベンクラミド(G)を投与した群(CPR+G)③ 蘇生後から2時間体温を33℃に低下させNSを投与した群(CPR+低)④ 蘇生後から2時間体温を33℃に低下させグリベンクラミドを投与した群(CPR G+低)。脳水分量は蘇生24時間後に乾燥法を用いて測定した。 【結果】マウスの心停止・蘇生後の脳水分量はグリベンクラミドの投与により有意にコントロール群(CPR NS)より減少した。さらに、その脳水分量は低体温療法群と同等であり、脳浮腫の抑制効果が認められた。血糖値は各群で有意差はなかった。 【結論】蘇生後のグリベンクラミド投与は脳水分量をコントロール群より減らし、その浮腫抑制効果は低体温療法と同等であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の到達目標を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
脳浮腫に関与するもう一つの受容体に関して実験を行う。 虚血後早期に脳内で増加するNa-K-Cl共輸送体1(NKCC1)は、脳梗塞モデルでは拮抗薬のブメタニドにより浮腫軽減効果が認められているが、全脳虚血では調べられていない。NKCC1はATP依存性チャネルであるため、全脳虚血では血流が途絶しATPが枯渇してNKCC1が作動せず水の流入に関与しないかもしれない。NKCC1はβ遮断薬によって抑制されることも知られているので、β遮断薬の浮腫抑制効果も合わせて調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より順調に経過したため、動物購入数が予定より少なかった。 前年度と同様にマウスを用いた心停止モデルを用いる。次年度は蘇生30分後にNa-K-Cl共輸送体1の拮抗薬であるブメタニド(30mg/kg)を静脈内投与、24時間後の脳水分量を測定する。全身麻酔下に脳を摘出し、その水分量を測定する。ブメタニドに浮腫軽減効果が認められた場合、ブメタニドとNKCC1抑制作用を持つβ遮断薬(ランジオロール)を併用する。ランジオロールは中心静脈カテーテルより0.1mg/kg/minで持続投与(4時間)する。4群必要。 蘇生24時間後の生存率は90%近いが蘇生に成功しないものを含めて各群20匹必要、血行動態測定のためのマウス5匹も含めて20×4+5×4で約100匹のマウスが必要となる。
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