研究課題
血管内皮の管腔表面に存在する内皮グリコカリックス層は血管透過性調節においての重要な役割を担っている。内皮グリコカリックス層は、血管の構造が臓器ごとに大きく異なるため、それぞれの血管に対する固有の性質の有無などはさらなる研究が必要であるため本研究では、まずグリコカリックスの正常な3次元構造を臓器ごとに同定したうえで、敗血症時の急性血管内皮傷害下における変化を検証するものである。血管内皮グリコカリックスは構造的に不安定であり,本研究では硝酸ランタンを用いた電子染色を行い描出に成功した。また、グリコカリックスは,急速輸液によるシェアストレスの増加によっても引き起こされるため、灌流固定時の内皮グリコカリックスに対するShear Stressを減弱するため,右心耳を切開し圧を開放すること,灌流液の速度を1mL/分と低値にすること,心臓腎臓肝臓への灌流がしやすいように頸動脈を結紮することを行い,グリコカリックスの超微形態を描出した。心臓、肝臓、腎臓、肺の血管内皮グリコカリックスの正常像を確認した。心臓と肺は連続型毛細血管に属し、どちらもグリコカリックスが血管内皮全体を覆うように存在していた。腎臓の糸球体に認められる有窓型毛細血管は特徴的な小孔構造を有しているおり、この小孔は小分子を通過させるが,タンパク質などの大分子の通過を制限しているといわれている。この孔はグリコカリックスによって覆われさらに狭小化しているように観察された。肝臓で認められる洞様毛細血管は大きく不整形な孔があり,血管内皮細胞は非常に薄く,非連続的で基底膜は確認できない。この血管のグリコカリックスは孔を覆っておらず,また,心臓や腎臓の血管に比べグリコカリックスの構造が薄いことがわかった。いずれの血管も敗血症においてグリコカリックスが脱落していることが確認できた。
1: 当初の計画以上に進展している
正常血管内皮構造の描出と敗血症時のグリコカリックスの形態学的変化についてはすでに検証が終わっており(Crit Care 2017、Chest 2018 in Press)、当初の予定以上に研究は進展している。
今後は敗血症におけるリンパ管の構造と機能の検討を行っていく。従来は血管内外の静水圧と膠質浸透圧のバランスで水が移動すると考えられ、間質に異動した水は静脈に再吸収され除去されると考えられていた。近年、内皮グリコカリックス層は内皮透過性調節機能を担い、血管内外の物質輸送に関与することが明らかになった。これに伴い、間質の水は血管内へ再吸収されずそのほとんどがリンパ系によって除去されることが明らかになった。敗血症により間質への水の漏出が増加するため、その除去に関してリンパ管の構造変化とその機能を明らかにする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件)
Chest
巻: - ページ: -
10.1016/j.chest.2018.03.003
Biomedical Reports
10.3892/br.2018.1058
Critical Care
巻: 21 ページ: -
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Thrombosis Research
巻: 156 ページ: 91~100
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