研究課題
本研究の目的は、グリコカリックスの正常な3次元構造を臓器ごとに同定したうえで、敗血症時の急性血管内皮傷害下における変化を検証し、敗血症による臓器障害の成因を血管内皮傷害の観点から個々の臓器について検証することである。連続型毛細血管は最も一般的な毛細血管で、心臓、肺、骨格筋、神経に存在する。内皮細胞は核の部分で厚いが、そのほかの部分は0.1-0.2 µmと薄い。細胞同士の連結部は強く結合しており、内皮細胞の外側を基底膜が完全に覆っている。硝酸ランタンを用いて血管内皮グリコカリックスを描出するとグリコカリックスが血管内皮全体を覆うように存在していることが確認された。また、同形態を示す心臓、肺、脳の血管のグリコカリックスを比較したところ脳>心臓>肺の順で厚さが異なり臓器ごとでも形態が異なることが証明された。腎臓の糸球体に認められる有窓型毛細血管は特徴的な小孔構造を有している。解剖学的にはこの小孔は60-80nmであるが小孔を覆うように存在するグリコカリックスによって孔のサイズは15nmほどまで狭小化する。 さらに基底膜をこえてタコ足細胞のレベルまで達すると孔のサイズは6nmほどとなるのに加えて、タコ足細胞の表面もグリコカリックスで覆われていることが観察され、アルブミンや大分子は通過することができない構造になっていた。肝臓で認められる洞様型毛細血管は、血管内皮間の結合は弱いため、卵円形の孔がある。血液はこの孔を通してDisse腔と交通しビリルビンなどの物質の交換を行っている。この血管のグリコカリックスは孔を覆っておらず、心臓や腎臓の血管に比べてグリコカリックスの構造が薄いことがわかった。リポ多糖投与により血管炎を誘発すると、いずれの血管においても血管内皮グリコカリックスは傷害され剥がれ落ちる。その結果、血管内皮細胞の表面が血管腔に露出し内皮細胞は傷害されることも確認できた。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた肺、心臓、腎臓、肝臓の血管の形態の調査だけでなく脳の血管の形態の確認も行うことができ、論文化できたため。
従来は血管内外の静水圧と膠質浸透圧のバランスで水が移動すると考えられ、間質に異動した水は静脈に再吸収され除去されると考えられていた。近年、内皮グリコカリックス層は内皮透過性調節機能を担い、血管内外の物質輸送に関与することが明らかになった。これに伴い、間質の水は血管内へ再吸収されずそのほとんどがリンパ系によって除去されることが明らかになった。敗血症により間質への水の漏出が増加するため、その除去に関してリンパ管の構造変化とその機能を明らかにする。
差額が10000円以下であることから、当初予算と実使用額に誤差を生じたもの。この差額に関しては、研究遂行に必要な物品などの充当する
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 17523
doi: 10.1038/s41598-018-35976-2
Chest
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doi: 10.1016/j.chest.2018.03.003