研究成果の概要 |
心臓から出た大動脈は最終的には一層の内皮細胞で構成された毛細血管になる. 毛細血管では血液と組織の間で酸素をはじめとする物質交換が行われているが, この恒常性維持の維持に重要な役割を果たしているのが血管内皮グリコカリックスである. 血管内皮グリコカリックスは構造が非常に不安定で脆弱であること, 毛細血管内皮細胞の構造も内皮細胞同士の接合様式や器官による違いが大きいことにより3次元構造の同定は困難であった.本研究では心臓, 腎臓, 肝臓, 肺, 脳の毛細血管内皮構造とその表面に存在する内皮グリコカリックスの構造の違い, さらに実験的に誘発した血管内皮傷害の傷害形態を確認することができた.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
2016年敗血症ガイドラインが改訂され, 敗血症は臓器障害を伴う感染症であると定義された。敗血症における臓器障害はサイトカインストームによる血管内皮傷害がその要因として考えられている. 血管内皮細胞の内膜面にはグリコカリックスとよばれる糖鎖の層が存在し、近年、血管内皮傷害の本態は内皮グリコカリックスの障害であることが明らかになってきている. グリコカリックスは血流の制御において重要な役割を果たしており, 近年はその機能維持・回復は新しい治療の開発のターゲットとして注目されているが, その3次元構造を視覚的にとらえた報告はほとんどないため, 本研究により構造を明らかにする.
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