研究課題/領域番号 |
17K11574
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
泉 友則 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (00261694)
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研究分担者 |
田岡 万悟 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (60271160)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機能プロテオミクス / 細胞質漏出 / 細胞表面結合 / 炎症メディエーター / 組織修復 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、申請者がこれまでに特定した“組織損傷時に漏出し、単球表面に結合する細胞内タンパク質(細胞外機能分子)”について、単球同様にその受容体を発現する内皮細胞での役割を明らかにする。H30年度は、内皮細胞受容体を介した単球の細胞接着、および内皮細胞間結合に対する細胞外機能分子の影響を解析した。また、内皮細胞表面の抗凝固性における機能的役割を明らかにするために、TNFa 処理、および未処理のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)存在下での血液凝固活性を測定した。 ゼラチンコートした96穴マイクロプレート上にHUVECを播種し、サブコンフルエント状態になるまで培養した。培地交換後、TNFa存在下でHUVECをさらに24時間培養し、実験に使用した。単球の細胞接着実験は、細胞株U937、HL60、およびTHP-1を細胞外機能分子とともにHUVECへ添加し、接着細胞数をカウントした。凝固活性測定は以下の条件で行った。培地を除去後、細胞外機能分子とともに15分間インキュベーションし、HUVEC表面に結合させた。上清を除去後、クエン酸加ヒト血漿、次いで25 mM CaCl2を添加し、405 nmの吸光度の変化を継時的に測定した。 内皮細胞受容体を介した単球の細胞接着に関して、細胞外機能分子添加による明らかな促進や抑制は見られなかった。また、内皮細胞間の結合に関しても、細胞外機能分子の関与は確認できなかった。一方、血液凝固活性については、細胞外機能分子を結合させたHUVECは、凝固時間延長、および反応速度低下の傾向を示した。TNFa処理したHUVECでは、未処理に比べて高い凝固活性を示したが、細胞外機能分子による明らかな影響は見られなかった。これは、細胞外機能分子の細胞表面への結合は、基本的に内皮細胞の抗凝固性を維持する側に働くが、急性期の激しい反応に対しては影響しないことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、(1)内皮細胞間結合に対する細胞外機能分子の影響、(2)内皮細胞の運動性に対する細胞外機能分子の影響、(3)内皮表面の抗凝固性に対する細胞外機能分子の影響、以上3項目を実施計画に記載した。項目(2)はH29年度に既に実施し、H30年度は、替わりに(4)内皮受容体を介した単球の細胞接着・遊走について実験を行った。いずれの項目についても測定データを着実に集積しつつあること、また、本研究課題の主目的である細胞外機能分子の内皮細胞に対する役割解明に関して、新たな活性を既に見出していることから、おおむね計画通りの実施状況と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果により、損傷細胞から放出され、単球表面に結合する一群のタンパク質から同定された細胞外機能分子は、単球細胞株においては、MAPキナーゼのリン酸化を増強する一方で、内皮細胞においては、その運動性を増加させ、組織修復を促進していることが明らかになった。その他の可能性のある作用点として、内皮細胞の細胞間結合や抗凝固性への影響も検討し、最終的に本細胞外機能分子の標的が内皮細胞の運動性にあるとの結論に至っている。H31年度は、HUVECのスクラッチアッセイで見られた組織修復反応の促進効果を中心に、細胞外機能分子の内皮細胞への結合から組織修復に至る経路(細胞内シグナリングなど)を分子レベルで確認する。「細胞外機能分子は、果たして善玉なのか?あるいは悪玉なのか?それらの制御は治療につながるのか?」ということを念頭に、急性期病態における血管内イベントとの関わりを探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度の研究実施計画に基づき、物品の購入を行った。次年度使用額126円は、物品の複数購入等による値引きの累積により生じたもので、当初予定された計画からの変更によるものではない。次年度請求額と合算し使用する予定であるが、少額であることから、H31年度の計画についても特段の変更はない。
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