研究課題
これまで、一酸化炭素中毒後の津発性脳症の発症には、マイクログリアの活性化が関与することが疑われていた。今回、この研究中に得られた知見は、これまでの仮説を覆すものであった。一酸化炭素中毒時、これまで言われてきたマイクログリアの活性化は認められず、むしろその樹状突起はちぎれ、数も減少している所見が得られた。そのデータは、免疫組織化学、Real-time PCR、Western Blotting、フローサイトメトリーといったあらゆる実験方法でも同様の結果が得られた。病態脳において、マイクログリアは活性化することによってダメージを受けた細胞や死んだ細胞を取り込み、デブリスクリアランスをすることで脳内の環境を改善する役割を持つが、その際に出すサイトカインによって周囲に炎症を広げてしまう。しかしながら、同時に神経保護因子を放出することで神経に対し保護的な役割も持つ。一酸化炭素中毒では、マイクログリアの減少だけではなく、神経保護因子の減少も同時に示唆された。また、マイクログリアだけではなく、成熟ミエリンのダメージや、ミエリン前駆細胞のダメージも示唆された。これらのことから、遅発性脳症の発症には、マイクログリアの減少による神経保護効果の減弱および、ミエリンおよびその前駆細胞の減少による長期的な脱髄現象が大きな原因と考えられた。この結果は論文としてまとめ、Brain Researchに発表された。我々は、一酸化炭素中毒において、マイクログリアやミエリン前駆細胞が減少に向かうことに介入することは困難であると考え、マイクログリアの産生する神経保護因子を投与することで、遅発性脳症の発症を抑制することを目標に新たな研究を始めた。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Neurochemistry International
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