研究課題/領域番号 |
17K11581
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
伊関 憲 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70332921)
|
研究分担者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 肝障害 / 肝星細胞 / 肝星胞線維化 / 四塩化炭素 / PKCδ |
研究実績の概要 |
交通外傷や心血管障害等による脳障害ならびに中毒性肝障害は、救急診療において日常遭遇する重要症例である。本研究では、救急症例の中で、生体の主要な臓器である脳および肝臓の障害に着目し、これらの病態における組織・細胞レベルの応答メカニズム解明に向けた基礎科学的アプローチを行い、障害の軽減と回復の促進を目指した臨床応用の基盤研究とすることを目的としている。 本年度は、中毒性肝障害についての実験を継続した。申請者等はこれまで、細胞内情報伝達に関わる酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)ファミリーの生理機能を解析してきたことから、この分子のKOマウスを用いて四塩化炭素による中毒性肝障害モデルを作製した。肝障害後の肝星細胞活性化の指標としてα-SMAタンパクの発現を解析した。ウェスタンブロット解析の結果、DGKα-KOマウスにおいてα-SMA のタンパク発現が著しく亢進することが明らかとなった。6週間の連続の四塩化炭素投与による慢性線維化モデルにおいて、DGKα-KOマウスでは多くの肝細胞が腫大しており、野生型マウスよりも組織損傷が重度であったが、線維化の程度に明らかな差は認められなかった。α-SMAによる免疫組織化学やウェスタンブロット解析の結果、DGKα-KOマウスではα-SMA陽性細胞が増加し、タンパク発現が著しく亢進していることが明らかとなった。さらに、DGKα-KOマウスではPKCδのリン酸化レベルが亢進しており、PKCδによる肝星細胞の活性化が亢進している可能性が示唆された。以上より、肝星細胞の活性化には、DGKα-PKCδが関与すること、しかし肝線維化の進行には他のシグナル経路も関与する可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、中毒性肝障害について、6週間連続の四塩化炭素投与による慢性線維化モデルの解析を行った。その結果、DGKα-KOマウスでは多くの肝細胞が腫大しているのが観察され、肝星細胞活性化の指標であるα-SMA陽性細胞が増加することを明らかにした。ウエスタンブロットの結果、ジアシルグリセロール(DG)により活性化されるPKCファミリーの中で、δ型PKCのリン酸化レベルが亢進しており、DG-PKCδ経路による肝星細胞の活性化亢進が示唆された。今年度の進展は、急性期モデルに加えて、慢性化モデルの解析を進めたことである。また、種々のPKCファミリーを解析した結果、δ型PKCの関与を明らかにしたことである。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの肝障害モデルの解析を進めるにあたり、DGKα-KOマウスを中心に実験を行って来たが、これに加えて他のDGK-KOマウスを用いた解析も検討したい。このことにより、DGKα以外のDGKファミリーが関与する可能性を精査し、複数のDG代謝経路がPKCδの活性化に関与するか否かの検討を行う。また、肝星細胞活性化において示唆されたDGKα-PKCδ経路の解析を、DGK阻害剤と培養細胞モデルを用いて検証を進める。また、PKCδの下流にある標的分子を追求し、肝線維化の促進に至るコラーゲン分子の発現増加を調節する転写制御シグナル経路を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品の消耗費が既存の試薬などを用いることにより節約することができ、余剰金ができた。次年度は論文の投稿があり掲載費なども発生するために新たな費用が必要になると思われる。
|