研究課題/領域番号 |
17K11583
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
加古 英介 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (70464576)
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研究分担者 |
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アストロサイト / カリウム |
研究実績の概要 |
脳内の水分の量を規定しているアストロサイトの培養系を確立し、普段の脳内環境に近いと思われる脳脊髄液に準じた組成の溶液にて静置することでアストロサイトの容積の変化を観察している。アストロサイトがカリウムの濃度上昇に反応して、細胞外から水分を細胞内へ引き込んでいるかを解析するためである。 アストロサイトが、周囲の細胞死に伴って上昇する細胞外カリウム濃度の上昇に伴ってカリウムを自身の細胞内へ取り込み、同時に水分を流入させていることが証明できれば、未だ明らかとなっていない脳の容積調節機構の一端が明らかになり、傷害時の脳浮腫の予防や治療法などの開発につながると考えられる。またカリウムは、神経細胞の脱分極による刺激の産生や伝達が行われた後の再分極に重要な働きを行っており、カリウム濃度の上昇は、けいれんなどの異常な神経活動の原因になっていると考えられ、アストロサイトによるカリウムの取り込み機構の詳細を明らかにすることが出来れば、けいれんの治療法の開発にも寄与する。 現在はカリウムの濃度を変化させ、アストロサイトの容積の変化を解析すべく、適切な条件を検討中である。 現段階では、介入後の観察時の細胞容積が一定でなく、解析が困難な状況である。結果が安定するために介入前のアストロサイトの密度や容積が重要であり、またカリウムの濃度変化後をどのようなタイミングで解析を行うのが一番生理的であるか等を解析中である。さらに、試薬を用いたアストロサイト内のカリウム濃度を測定する系を確立中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養中のアストロサイトの数の増加や体積の増え方を一定の範囲にするのに適切な条件を見出すのに時間を要した。申請者が以前使用していた物品や薬品と違うものを使用しているためと思われた。また、カリウムの濃度を蛍光色素の変化で見るのにも、条件を一定にするのに時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイトの培養そのものについては順調なため、各解析のための条件検討を繰り返す。またアストロサイトの膜表面のカリウムを通過させるためのチャネルや能動的ポンプ(Na-K-ATPポンプ)等をブロックする系も同時に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アストロサイトがカリウムの濃度上昇に反応して細胞外から水分を細胞内へ引き込んでいるかを解析するためには、実験結果が一定である必要があるが、ばらつきが大きいため最適な条件を見つけるのに時間を要しており、動物を用いた試験など次の実験のための費用がまだ使用できていない。 次年度は培養実験を用いたアストロサイトの細胞内濃度計測の系を確立し、また細胞外のカリウムを、どの機構を用いて細胞内に引き込んでいるかを解明する予定である。ナトリウムポンプの阻害剤や、数種類あるナトリウムチャネルのブロッカーを用いるために助成金を使用する。また、アストロサイト間でどのようにカリウムイオンの移動を行っているかを解明するために、カリウム濃度を計測できる培養系を確立する予定であり、そのための細胞や、培養にかかる溶液などに助成金を使用する予定である。
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