昨年度までに確立したアストロサイトの培養系を確立しアストロサイトの容積の変化を観察した。生後1-2日齢のマウスの脳の脳室下帯からアストロサイトを分離培養した系を用いて実験を行った。脳内のアストロサイトがカリウムの濃度上昇に反応して、細胞外から水分を細胞内へ引き込んでいるかを解析するために細胞内カリウム濃度によって蛍光量を変化させる試薬を用いて細胞外のカリウム濃度によって培養アストロサイトの細胞径の変化することが示唆された。 またルビジウム86を用いた細胞外から細胞内へのカリウム取り込み量を解析する系を用いて、アストロサイトがカリウムを細胞内へ取り込む際にアデノシン三リン酸(ATP)が細胞膜表面のNA-K-pumpチャネルを活性化することによってカリウム取り込みを促進するメカニズムを利用していることを証明した。 これにより、脳の容積調節機構の一端が明らかになり、傷害時など細胞外カリウム濃度が高くなることによって脳浮腫をきたす場合のアストロサイトの膨化予防や治療法などの開発につながると考えられる。またカリウムは、神経細胞の脱分極による刺激の産生や伝達が行われた後の再分極に重要な働きを行っており、カリウム濃度の上昇は、けいれんなどの異常な神経活動の原因になっていると考えられ、ATPがアストロサイトのカリウム取り込みを促進していることが示されたため、薬剤投与によるカリウム取り込み促進という新しいメカニズムを利用したけいれんの治療法の開発にも寄与すると思われる。
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