研究実績の概要 |
当初イソフルランによる腎障害の軽減効果が認められ、3種混合麻酔を使用して水素の軽減効果を検討する実験を行う予定であったが, 追加の実験の結果イソフルランの腎障害の軽減効果がないことが判明し, 最終年度にイソフルランを使用して虚血再灌流(IRI)起因の急性腎障害(AKI)に対して水素の予防効果があるか検討を行った。AKIは8週令のSDラットを用い, 腎臓を片方摘出後, 対側腎を50分間クランプした。水素投与群はIRI開始前2時間, クランプ解除後2時間水素吸入を施行した。コントロール群としては水素を投与せず, IRI起因のAKIを作成した。水素投与群(n=7), コントロール群(n=6)に対して, 開始前, IRI後24時間, 48時間, 72時間, 7日後の5ポイントでクレアチン(Cr)と尿素窒素(BUN)の濃度を測定して, 水素によるAKI軽減効果に関して検討を行った。結果は以下のとおりであった。Cr濃度:水素投与群:前 0.29±0.06mg/dL, 24hr後:1.13±0.34mg/dL, 48hr後 0.77±0.18mg/dL, 72hr後 0.67±0.14mg/dL, 7日後 0.40±0.06mg/dL. コントロ-ル群:前 0.28±0.05mg/dL, 24hr後:0.70±0.13mg/dL, 48hr後 0.60±0.10mg/dL, 72hr後 0.62±0.04mg/dL, 7日後 0.40±0.09mg. BUN濃度 水素投与群:前 13.1±1.66mg/dL, 24hr後:70.5±14.38mg/dL, 48hr後 57.7±12.6mg/dL, 72hr後 47.6±8.52mg/dL, 7日後 36.3±3.61mg/dL. コントロ-ル群:前 14.1±1.76mg/dL, 24hr後:49.4±5.55mg/dL, 48hr後 41.2±3.95mg/dL, 72hr後 37.5±4.63mg/dL, 7日後 34.3±4.32mg. BUN, Crともにピ-ク値は24hrであったが, 水素投与群がコントロール群に比し, BUN, Crともに高値であり, 水素による軽減効果が認められないと判断し, 予定していた実験(水素濃度により軽減効果に差があるか?, AKIから慢性腎臓病への移行を水素が抑制効果があるか?)を断念した。
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