研究課題/領域番号 |
17K11590
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
別府 高明 岩手医科大学, 医学部, 教授 (70275543)
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研究分担者 |
寺崎 一典 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 准教授 (60285632)
藤原 俊朗 岩手医科大学, 医学部, 助教 (60405842)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 一酸化炭素中毒 / 酸化ストレス / fractional anisotropy / 脱髄 / 認知障害 |
研究実績の概要 |
当該研究は、一酸化炭素(carbon monoxide, CO)中毒後急性期の酸化ストレス度、亜急性期の脱髄が連鎖的に起こっていることを確認し、CO中毒後遺症としての認知障害を予測しえる最適は検査法と検査時期を明らかにすることを目的として行われた。 CO中毒発症前に認知障害がなく正常の日常生活が可能であり、CO中毒診断時に高度意識障害(Japan Coma Scale 3桁)の重症CO中毒症例30例(20歳以上60歳以下)を対象とした。CO暴露後超急性期に各症例毎に酸化ストレスと抗酸化能を、それぞれ分光光度計を用いてd-Roms (derivatives of reactive oxygen metabolites) test(/U Carr)、BAP (biological antioxidant power) test (/μM)により定量測定。酸化ストレス(oxidative stress)/抗酸化能(anti-oxidative potential)の比(OA)を算出した。 次に、発症から8日目から14日目までの亜急性期に、3.0-T 高磁場MRIを用いて大脳深部白質のfractional anisotropy値(FA)を各症例毎に測定した。 発症から10週目の慢性期においてminimal mental state examination (MMSE)を施行し、認知機能の指標としてMMSEスコアを出した。 MMSEスコア26点以下をCO中毒による認知障害と定義したところ、認知障害は6例、非認知障害は24例であった。認知障害症例群は、非認知障害症例群より、有意にOA比が高値、かつ、FA値が低値であった。 CO中毒による後遺症としての認知障害は、超急性期における酸化ストレス、亜急性期の大脳白質神経線維の崩壊が連鎖的に起こっていることが示唆された。また、CO中毒後の認知障害の発症予測の方法として、超急性期の酸化ストレス度(OA比)、亜急性期のMRIによるFA値測定が有用な検査時期と検査法である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO中毒による後遺症としての認知障害が、超急性期における酸化ストレス、亜急性期の大脳白質神経線維の崩壊が連鎖的な生体内変化が原因である可能性が示された。また、CO中毒後の認知障害の発症予測として、超急性期の酸化ストレス度、亜急性期のMRIによるFA値測定が有用な検査法である可能性も示すことができた。 一方、当初の計画にあった、トレーサPK11195を用いたpositron emission tomography (PET)による慢性期の大脳白質内マイクログリア活性の測定は、予定どおり進行できなかった。理由として、高純度のPK11195を精製することができなかったこと、CO暴露後15~28日以内の期間内に患者をサイクロトロン施設(車で30分)に搬送する必要があったが、病状等により全症例を予定通り撮像することができなかったことが挙げられた。
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今後の研究の推進方策 |
最良の感度・特異度で慢性期認知障害の予知が可能となる閾値をOA比、FA値のそれぞれで決定することを目指す。 トレーサPK11195の精製において機材を変更するなどの工夫を行い、より高い純度の精製を模索する。また、対象となる症例の重症度を低く設定し、より多くの症例を蓄積するとともに、サイクロトロン施設への搬送が可能な症例を増加させる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画にあったトレーサPK11195の予定通りに精製されなかったこと、PK11195を用いたPET撮像が全症例に施行できなかったことによる。 次年度は、予定通りの精製および患者への投与を行う。
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