研究課題/領域番号 |
17K11591
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
塩田 勝利 自治医科大学, 医学部, 准教授 (40398516)
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研究分担者 |
舩田 正彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, その他, その他 (20299530)
岡田 剛史 自治医科大学, 医学部, 助教 (20742844)
西嶋 康一 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (30198460)
岩村 樹憲 松山大学, 薬学部, 教授 (70184900)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | カフェイン中毒 / 薬物中毒 / 救急医学 / 抗精神病薬 / 薬物乱用 |
研究実績の概要 |
Caffeineは日常的に摂取している興奮性薬物で、高濃度のcaffeine入り飲料の流行や安価な海外製caffeine錠剤が容易に入手しやすくなり、本邦でもcaffeine中毒を呈する例が増加している。2011年度からの5年間に少なくとも101人が救急搬送され、7人が心停止となり、うち3人が死亡したことが日本中毒学会の調査で判明している。しかしcaffeine中毒に対しては対症療法しか存在しない。そこで我々はcaffeine中毒の治療法を確立するため、caffeineによる高体温及び行動量増加をcaffeine中毒の指標として選択し、これらを抗精神病薬であるrisperidoneが抑制するか検討した。 Wistar系雄性ラットの頸部皮下にNano Tagを埋め込み、体温及び行動量の測定を室温は24度の条件下で行った。Caffeine 30mg/kgをラットに腹腔内投与し、5分後にrisperidone 0.5mg/kg及び対照群として生食を腹腔内投与し、caffeine投与後90分後まで5分毎の体温・行動量を測定し両群を比較した。 Caffeine投与後、体温は投与前平均36.56℃から徐々に上昇し投与後80分には平均37.88℃まで上昇した。行動量は投与前平均63回から急激に上昇し、投与後80分では平均927回まで増加した。Risperidone投与群では体温上昇を、caffeine投与20分後から90分後まで有意に抑制した。行動量増加もcaffeine投与後20分後から30分後まで、45分後、55分後から90分後まで有意に抑制した。 これらの結果からrisperidoneはcaffeineによる体温上昇及び行動量増加を有意に抑制することが明らかになり、risperidoneがcaffeine中毒の治療薬になる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、脳内微小透析法実験の準備がやや停滞しているものの実験はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
RisperidoneはD1、D2受容体拮抗作用、5-HT2A、5-HT2B、 5-HT2C、 5-HT1A受容体拮抗作用等を有しているため、どの拮抗作用がcaffeineによる高体温及び行動量増加を抑制するか、各種受容体拮抗薬を用いて明らかにする。 さらに脳内微小透析法を用いて、caffeineが他の興奮性乱用薬物であるmethamphetamineやMDMAと同様に脳内ドパミン(DA)、セロトニン(5-HT)を上昇させるか検討する。またcaffeineによる脳内DA、5-HT上昇がrisperidoneにより抑制されるも検討する。これらを行うことでcaffeine中毒の機序を解明し、caffeine中毒の治療薬の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳内微小透析法を実施しなかったため、当初予定した物品費に余裕がでたため。
発生した次年度使用額は平成30年度の行動実験及び脳内微小透析法で使用する予定である。
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