研究課題
集中治療を要した重症患者の長期的な転帰は、高齢者に対する集中治療の需要増加と短期予後の改善を背景に、重要性を増している。超高齢化社会となる本邦において、急性期の治療技術の進歩により救命の可能性が広がった患者群に対する新たな評価軸が必要と考え、本研究では重症患者の退院1年経過した時点における健康状態(日常生活に関わる機能障害の発生頻度及びその程度)とその関連因子を明らかにすることとした。結果として、救命救急センターICUから自宅退院できた重症患者のうち58%が集中治療後症候群(PICS)であった。これらの患者は、身体・精神・金銭について複数の問題を同時に抱えていた。入院中のせん妄がPICSの唯一の関連因子であることが判明し、また高齢者では入院時に計測した骨量が退院1年後の身体機能と関連していることが示された。今後は、これら関連因子に対する予防的介入についての可能性が示された。一方、PICSが高率に発生していたにもかかわらず、急性期治療後のフォローアップ体制が十分でないことが明らかとなった。PICSに対して医療提供できる施設は限られていたことから、集中治療を行っている基幹病院においてPICS外来を整備することで、途切れることがない包括的支援体制を構築することが必要と考えられた。本研究では、地域の連携する病院と情報共有を行い、継続したリハビリテーションプログラムを構築している。今後は、構築したプログラムを実践し、PICS外来で効果判定することを予定している。
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