研究課題
本研究はラット頭部外傷モデルにヒト胎児神経幹細胞およびiPS由来神経細胞を移植し、行動実験及び組織学的、生化学的検討を行うことを目的としたものである。将来的には重症頭部外傷に対する神経再生医療の成功に寄与することを目的としている。当初の計画では前年度までのラット実験を主軸としたデータを基に本年度その解析とそこから得られたデータが我々が目指す神経再生にどの程度寄与したかを評価する期間と定めていたが、外傷モデルを構築する段階で我々が予定していたような理想的なモデルの作成に想定を超えて難渋した。具体的には外傷そのものによるダメージが大きく外傷モデルを作成し行動実験を行うまでの期間にラットが生存できないケースや、生存していた場合でも脳損傷による運動機能を中心とした神経学的な機能が大きく損なわれ行動実験の遂行が不可能なレベルになることが過半数を占めた。動物モデル作成方法の見直しも試みたが、ごく軽微な脳損傷群(神経学的な影響がほとんど加わらない群)と重症化群(脳損傷による影響が大きい群)に二分される状態となり、我々が本来想定していたモデルの構築には至らない結果となった。したがってデータ解析を行うには十分なデータ数を確保できず、当初予定したような統計学的な評価が困難な状態であった。少数ながら得られたデータ解析でもヒト胎児神経幹細胞およびiPS由来神経細胞を移植した群に統計的に有意な改善は認められなかったが、モデル構築に改良を加えることで今後安定したデータを蓄積できる見込みもあり、期限終了後も研究は続ける方針である。