研究課題
本研究では、まず軸索伸長のモデルとして頻用されるPC12細胞を対象としてPACAPによる軸索伸長作用の分子機構について、各種阻害剤を用いた解析をした。その結果、PACAPによる軸索伸長作用は、PAC1-R受容体を介したPI3Kの活性化によるAktの活性化、さらにAktの活性化によるGSK-3βの不活性化とそれに伴う不活性型であるリン酸化CRMP2の減少という経路であることが明らかになった。また、ニューロン・グリア共培養系に対して低酸素低グルコース負荷(Oxygen Glucose. Deprivation:OGD)処置をすることで虚血状態をin vitroで再現し、PACAPの神経細胞死抑制作用を解析した。OGD処置を行ったニューロン・グリア共培養系に対してPACAPを添加すると神経細胞死が抑制されたが、PAC1-Rアンタゴニストの共存下ではその効果は減弱した。このことから、PACAPによる虚血に対する神経細胞死抑制作用にはPAC1-Rが関与していることが示唆された。さらに、上記の結果より、PACAPによる軸索伸長作用、神経細胞死抑制作用には3種のPACAPの受容体のうち、PAC1-Rが関与していることが示唆されたことから、同遺伝子ノックアウトマウスを作製した。今後はこのマウスを用いて動物個体レベルでの解析を行う予定である。本研究ではPAC1-R遺伝子ノックアウトマウス作製が当初の予定より遅れたため、動物個体での解析が出来なかったが、今後、さらなる解析を遂行することにより脳虚血に対するPACAPによる軸索伸長、神経細胞死抑制作用の詳細な分子機構が解明され、これらの作用における新たな標的分子の発見ができると思われる。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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