研究課題/領域番号 |
17K11599
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
鍬方 安行 関西医科大学, 医学部, 教授 (50273678)
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研究分担者 |
室谷 卓 関西医科大学, 医学部, 講師 (20528434)
池側 均 関西医科大学, 医学部, 准教授 (80379198)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | circulatory shock / sepsis / blood flow / noradrenaline / beta adrenergic receptor |
研究実績の概要 |
ウサギを用い、敗血症ショック時の臓器・組織血流調節機序破綻の病態生理を明らかにし、その制御法開発の端緒を開くことを目的とした。H29年度は、ランジオロール(以下La)の効果を検討する計画であったが、徐脈効果が不十分で薬理効果濃度の検討を継続中である。昇圧剤による平均動脈圧(MAP)是正時の検証を先行させた。ウサギは全麻下に処置を行い、MAP、心拍数(HR)、心拍出量(CO)、上腸間膜静脈血流量(SMV)、腎静脈以遠下大静脈血流量(IVC、腸管のLaser Dopplerによる組織血流量(q)測定を行った。敗血症(以下S)群、対照(以下Ctrl)、CtrlのMAPを約20%増加させるNAD量を決定するNAD群、S+NAD群(n=3, each)を作成した。前値測定後、SではLPS 1mg/kg静脈内投与する(time 0)。NADは、NAD群のpreliminary testで決定した投与量を採用し、time0より持続静脈内投与した。30分から240分まで30分おきに測定した。Ctrlと比しS群は60分以降20%のMAP低下、NAD群は20%上昇した。S+NAD群はCtrlと一致するMAP経過をとり、治療模倣群の目的を果たした。COはNAD群で約20%増加、他群はCtrlと差がない。HR推移に群間の差はない。SMVはS群で60分以降増加し、90分以降ではCtrlに対し約25%増加した。NAD、S+NAD群ではCtrlと差がない。IVCはS群で60分以降Ctrlに比し約20%低下したが他群にこの傾向はない。qは、S群で60分以降Ctrlより低値を示し、S+NAD群では、S群よりさらに低値を示した。敗血症時には腸管循環系で異常な血管抵抗減弱がおこりSMVが増加する一方、逆説的な腸粘膜血流低下が生した。血管収縮・昇圧を目的として敗血症臨床で汎用されるNADは、腸管循環系血管抵抗をS群より増加させるがqの改善には寄与しない。今後の治療介入効果を判定する病理モデルの知見が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
beta adrenergic blockerの選択、投与量決定が当初計画から遅れたが、一方で昇圧剤投与下の敗血症モデルの臓器・組織血流の問題点を再現する状態の作成は進んだ。3年計画全体からみると、おおむね順調な推移と考える。
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今後の研究の推進方策 |
ランジオロールが今回の検討におけるbeta adrenergic blockerとして応用可能かどうかを早急に判定し、不適切であればesmololなど本邦では臨床応用されていないものの、すでに敗血症時における一定の効果について既報告である薬剤の入手、使用にシフトする。H30年度以降は、このbeta blockerの作用をはじめ、NO生成阻害(拮抗剤の使用と、NOS合成阻害の両面から)の効果など、実臨床応用が近いと考えられる介入を行ってゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入費に予定と差額が生じました。H30年度の消耗品費に充当する予定です。
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