研究課題/領域番号 |
17K11604
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
秋山 剛 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (70202554)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心虚血・再灌流 / セロトニン(5-HT) / 血小板 / トランスポーター / 心筋細胞傷害 / マイクロダイアリシス法 |
研究実績の概要 |
生理的条件下で、心筋間質セロトニン(5-HT)の再取り込みに、selective serotonin reuptake inhibitor (SSRI)感受性の5-HT transporter (SERT)以外のtransporter (extra-neuronal monoamine transporter, EMT)が関与しているかを、麻酔下ラットの心臓にマイクロダイアリシス法を用い、心筋間質5-HT濃度、及びそのMAOによる代謝物である5-HIAA濃度をモニターしながら、organic cation 3 transporter (OCT3)の阻害薬であるcorticosterone、plasma membrane monoamine transporter (PMAT)の阻害薬であるdecynium-22をマイクロダイアリシスプローブから局所投与し、心筋間質5-HT、5-HIAA濃度の応答を調べた。 decynium-22局所投与により、心筋間質5-HT濃度はSSRIであるfluoxetineの局所投与の時と同程度に上昇し、心筋間質5-HIAA濃度は低下した。また、decynium-22存在下でも、fluoxetineによる心筋間質5-HT濃度上昇応答は変らなかった。一方、corticosteroneの局所投与では、心筋間質5-HT濃度の上昇は見られなかった。 これらの結果から、心臓組織細胞にはPMATが存在し、心筋間質5-HTの再取り込みにSERTと同程度に貢献しており、SERTを介した再取り込みと競合していないことが分かった。このことは、生理的条件下でPMATを介して、血小板以外の心臓組織細胞にも5-HTが取り込まれてMAOにより代謝されることが示された。また、心臓組織細胞にはOCT3は存在しないか、5-HTの再取り込みに関与していないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書における2年目の研究計画は、再灌流後のSSRIにresistantな細胞内への5-HT再取り込み機構の解明であり、すでに生理的条件下での心筋間質5-HTの再取り込みにSERT以外のEMTであるPMATが大きく貢献していることを明らかにしている。現在、ラットの心虚血・再灌流実験にて、再灌流時における心筋間質5-HTの再取り込み、および代謝へのPMATの関与を解明中である。したがって、研究は申請書の予定通り、ほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載したとおり、心虚血・再灌流実験にて、再灌流後のSSRIにresistantな細胞内への5-HT再取り込み機構の解明、および5-HT動態に基づいて虚血・再灌流時における心筋細胞傷害を薬理学的に軽減できるかの検討を、予定通り進めていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物、HPLC等機械の修理、薬剤等の消耗品の経費が予定より大きくなったため、予定していた設備備品が購入できず、次年度使用額が生じた。可能なら、翌年度分と合わせて設備備品を購入予定である。
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