心臓虚血・再灌流時には、心臓虚血部位局所においてセロトニン(5-HT)が過剰に蓄積することが分かっているが、それが細胞内に取り込まれ、代謝される過程で活性酸素を生じ、細胞を傷害すると考えられている。 前年度までの研究成果から、生理的条件下における心筋間質5-HTの細胞内取り込みには5-HT transporter (SERT)以外にも、plasma membrane monoamine transporter (PMAT)が非競合的に貢献していることが明らかとなっている。そこで本年度は、心虚血・再灌流時の心筋間質5-HT蓄積に対するPMAT阻害薬(decynium-22)の影響を調べた。 麻酔下Wistarラットの心臓にマイクロダイアリシス法を用い、心筋透析液を回収して透析液中5-HT濃度、およびその代謝物である5-HIAA濃度をHPLC-ECDにて測定した。 プローブを介してdecynium-22を局所投与すると、安静時および心筋虚血中の心筋間質中5-HT濃度はvehicle投与時に比べて有意に高値を示した。このとき5-HIAA濃度に有意な差は認められなかった。再灌流時には、5-HT濃度はさらに増加し、5-HIAA濃度は低値を保っていた、すなわち心筋間質における5-HTクリアランスが低下していることが示された。 これらの結果は、生理的条件下では、心筋虚血によって間質中に蓄積した5-HTは、再灌流時にPMATを介して心筋組織細胞内に取り込まれることを示している。このことは、再灌流時にPMATを介して心筋組織細胞内に取り込まれた5-HTが、monoamine oxidaseによる代謝を受けて5-HIAAと活性酸素の産生に寄与している可能性が示唆された。
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