研究課題/領域番号 |
17K11606
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷部 晃 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (90281815)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Candida albicans / 口腔カンジダ症 / 腸内細菌叢 / dysbiosis |
研究実績の概要 |
最近、腸内細菌叢の乱れが潰瘍性大腸炎など腸管における直接的な病変のみならず、うつ病や自閉症、あるいは肥満など多くの全身的な状態に影響を与えていることが示唆されている。口腔には微生物が1000億個程度常在しており、口腔微生物が腸内細菌叢に影響を与える事で全身に影響を及ぼす可能性がある。本研究課題では口腔カンジダ症の原因微生物であるCandida albicansをマウスに定着させて持続的に摂取することで、腸内細菌ならびに全身にどのような影響があるのかを探ることを目的とした。 マウスのエサをAIN-93Gにすることにより、免疫抑制剤ならびに抗菌薬などを使用せずにC. albicansを胃の噴門部付近に定着させ、C. albicansを腸管において持続的に摂取させることが可能となった。そこでC. albicans定着2週間後にマウス糞便を採取し、糞便中の細菌叢をT-RFLP法で解析したところC. albicans摂取によりLactobacillales目の割合が大幅に増加し、Bacteroidesが減少していた。したがって、結果としてC. albicans摂取により通性嫌気性菌の割合が増加し、偏性嫌気性菌の割合が減少した。さらに、この腸内細菌叢の変化がデキストラン硫酸ナトリウム(DSS) 誘導性腸炎に及ぼす影響を調べた。その結果C. albicans摂取により腸内細菌叢に変化があったにも関わらず、3.5%DSSを飲水投与した場合DSS誘導性腸炎によるマウスの体重減少にC. albicansの有無による有意差は認められなかった。これについてはDSSの濃度を変えることで誘導条件をよりおだやかにすることにより再度確認をすることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス口腔にはカンジダが定着しないことが知られており、口腔カンジダ症モデルの作製には免疫抑制剤や抗菌薬が使用されることが一般的であるが、本研究においてはそれらを使用することなくマウスの胃における噴門部付近に定着させることが可能となった。これによりマウスは常時C. albicansを腸管等において摂取することとなり、口腔カンジダ症においてC. albicansの摂取が腸内細菌叢に及ぼす影響を調べるためのモデルとして利用することが可能となった。また、このマウスモデルで糞便中の細菌叢の変化についてT-RFLP法により容易に変化を確認することが可能であった。これらのことから、今年度の計画していたことが予定通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにおいて、あらかじめC. albicansを摂取させた場合はDSS誘導性腸炎の程度に有意差が生じるという報告があるため、本研究においても誘導条件を変えることでC. albicans摂取の有無の違いによるDSSの程度の違いを確認し、その際の大腸の長さの変化を調べる予定である。また、何が原因で腸内細菌叢に変化を与えるのか調べるために、糞便中のIgAの量ならびに特異性を調べる。また腸炎においてプロスタグランジンE2が抗炎症的に作用するという報告や、C. albicansはアラキドン酸からプロスタグランジンE2を産生するという報告があるので、糞便中のプロスタグランジンE2について調べることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用マウスを購入したかったが、残額分では必要な匹数を入手できないため、次年度分と併せて十分な匹数のマウスを購入することにより実験を継続する。
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