研究課題/領域番号 |
17K11608
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60632130)
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研究分担者 |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50367520)
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90201855)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小脳 / 小脳核 / 筋感覚 / 三叉神経中脳路核 / 三叉神経上核 / 苔状線維 / 順行性神経トレーサー |
研究実績の概要 |
Parkinson症候群患者さんのDBS治療の対象部位の検討において、頭部の深部感覚の末梢からの入力と小脳からの入力の両方がある視床部位が後内側腹側核(VPM)に存在し得るとの仮説を本研究の申請で立てた。その証明のため、ラットを用いたin vivo 実験を、大阪大学歯学研究科動物実験指針に従って開始した。29年度はまず、三叉神経中脳路核ニューロンによって咀嚼筋筋感覚が入力する三叉神経上核のニューロンが、小脳に投射するのかどうか、投射するならば小脳のどこに、どのように投射するのかの解明を試みた。具体的には、咬筋神経の電気刺激と受動的開口に対する神経応答を橋の吻背側部に刺入したガラス管微小電極から記録して三叉神経上核の位置を同定した。次に、同定した三叉神経上核に順行性神経トレーサーであるBDAを、BDAを封入したガラス管微小電極から微量注入した。その一週間後に動物を灌流固定し、脳を摘出して、脳の連続切片を作成した。標識神経をABC法とDABを用いて可視化した後、顕微鏡観察した。標識された神経軸索終末が、小脳の皮質に注入部位に対して反対側優位だが両側性に認められた。特に、単小葉B、正中旁小葉、片葉旁小葉に強い投射が認められた。小脳核への投射も認められた。投射様態は、mossy fibers(苔状神経線維)に分類できた。本研究によって、口腔顔面領域の筋紡錘感覚の小脳内の入力部位とその入力様態が世界で初めて明らかになった。現在、標識終末の三次元的分布の解析を行っているところである。 更に、上記の小脳投射と比較するため、顎関節などからの深部感覚の小脳への投射の中継核である三叉神経感覚核群(主に中間亜核)から小脳への投射の、投射部位、投射様態の解明をめざす実験に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した様に、本研究の申請時に計画した30年度の実験「小脳投射と比較するための、顎関節などからの深部感覚の小脳への投射の中継核である三叉神経感覚核群(主に中間亜核)から小脳への投射の、投射部位、投射様態の解明」に既に着手している点では、研究は順調に進んでいる。しかし、29年度として計画し実施した「三叉神経上核に順行性神経トレーサーであるBDAの注入」によって、小脳皮質と小脳核に投射する標識軸索の投射部位と投射様態データは既に充分に得られてはいるが、その解析、特にその三次元的分布の解析が、当初の予想よりも容易では無く、大変苦労をしているところである。更に時間がかかりそうな状況である。このデータは本研究で最も重要な部分なので、30年度に継続して行うつもりでいる。
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今後の研究の推進方策 |
30年度に実施する予定の実験(詳細は下記)を行いながら、「現在までの進捗状況」に記した様に、予定より遅れている「三叉神経上核から小脳皮質と小脳核に投射する標識軸索の投射部位と投射様態の解析、特にその三次元的分布の解析」を、大至急完成させる予定である。大変興味深いデータが得られていることの確証が得られれば、データの収集法をより精度の高いものに変更する可能性がある。この場合は、三次元的解析にニューロン顕微画像解析装置Neurolucida (MicroBrightField社製)を用いるつもりである、この変更によって解析の完了までに更に時間を要することが予想されるので、この点を至急検討するつもりである。 上記の解析と並行して、30年度に実施予定の以下の動物実験を行う。BDAを充填したガラス管微小電極を延髄の吻外側に位置する三叉神経感覚核中間亜核に刺入した後、顎関節を支配する耳介側頭神経の電気刺激に対し強い応答を示す部位を捜し出し、そこにBDAを電気泳動にて微量注入する。一週間後に動物を灌流固定し、脳を摘出して、脳の連続切片を作成する。標識神経をABC法とDABを用いて可視化した後、顕微鏡観察する。標識された神経終末の小脳内の投射部位とその投射様態を解析する。その結果を、29年度の実験で既に得ている三叉神経上核からの小脳投射部位と比較検討する。さらに、三叉神経上核からの小脳投射と三叉神経中間亜核からの小脳投射の機能差異を調べるため、両系の投射部位にガラス管微小電極を刺入し、咬筋神経と耳介側頭神経の電気刺激に対する応答を記録し、応答の有無を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究助成金の申請書に記載したように、30年度も実験を遂行するので、それに必要な消耗品等の購入が必要である。また、実験の遂行と得られる研究結果の学術的評価を検討するために、学会に出席して情報の交換が必要である。 (使用計画)30年度の経費の使途は、研究助成金の申請当初と基本的には大きくは変わっていない。しかし、実験回数を,当初の計画よりも大幅に増やす必要が出てきたので、動物、器具、薬品などの購入量を増やす予定である。 以上により、計画当初よりもより多めの支出を行う予定である。
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