研究課題/領域番号 |
17K11610
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
住友 倫子 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50423421)
|
研究分担者 |
川端 重忠 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50273694)
中田 匡宣 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (90444497)
山口 雅也 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00714536)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | レンサ球菌 / 上皮バリア |
研究実績の概要 |
劇症型レンサ球菌感染症の発症過程において,化膿レンサ球菌は物理バリアである上皮細胞層の細胞間接着分子を傷害し,組織深部へ侵入する.我々はこれまでに,本菌がバリア機能の維持に重要なトリセルラージャンクション (TCJ) から上皮バリアを突破する現象を見出した.また,化膿レンサ球菌による細胞間接着傷害には,溶血毒素による宿主プロテアーゼの活性化および本菌が産生するプロテアーゼが関与することを明らかにした.本研究では,皮膚のバリア機能維持に重要なデスモソームに着目し,本菌プロテアーゼによるデスモソームの破壊と皮膚病態形成機構の関連を検証した. 表皮バリアの機能維持に重要なデスモグレイン1 (Dsg1) とデスモグレイン3 (Dsg3) の組換えタンパク質を作製し,臨床分離株の培養上清と反応させた.その結果,複数の臨床分離株培養上清によるDsg1とDsg3の分解が認められた.種々のプロテアーゼ阻害剤を用いて,化膿レンサ球菌が産生する分泌型システインプロテアーゼ SpeBがDsg1およびDsg3の分解に関与することを証明した.また,SpeBによるデスモグレインの分解が皮膚病態形成に及ぼす影響をマウス経皮感染実験により検証した.その結果,野生株感染マウスでは,真皮への菌体の侵入とDsg1およびDsg3の破壊を認めた.一方,SpeB欠失株感染マウスでは,デスモグレイン構造が保たれ,菌体は表皮の表層部で観察された. 以上の結果から,化膿レンサ球菌が産生するプロテアーゼ SpeB は,デスモソーム構成タンパク質であるDsg1およびDsg3を分解することにより,膿痂疹などの皮膚感染症の発症に寄与することが示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化膿レンサ球菌が産生するプロテアーゼと皮膚感染症発症の関連を証明した.また,トリセルラータイトジャンクション (TCJ) 構成タンパク質であるLSRの組換え体を作製し,LSRと相互作用する化膿レンサ球菌の表層分子候補が挙がっているため,おおむね順調に進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
トリセルラージャンクション (TCJ) 構成分子であるLSRと相互作用する化膿レンサ球菌の菌体表層タンパク質を検索・同定する.同定したTCJ結合タンパク質の組換え体および遺伝子欠失株を作製する.また,同定したTCJ結合タンパク質とLSRの相互作用を解析し,TCJの破綻および菌体の組織侵入に及ぼす影響を検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度にLSRと相互作用する菌体表層分子を検索し,MS解析による同定を行う予定であったが,LSRの組換え体作製に時間を要したため,MS解析による同定は次年度に行うように研究計画を修正した.このため,次年度使用額が生じた.
|