研究課題
劇症型レンサ球菌感染症の発症過程において,化膿レンサ球菌は物理バリアである上皮細胞層の細胞間接着分子を傷害し,組織深部へ侵入する.これまでに,本菌がバリア機能の維持に重要なトリセルラータイトジャンクション (TCJ) から上皮バリアを突破する現象を見出した.本研究では,TCJバリアの機能維持に重要なLSRに着目し,LSRと相互作用する細菌因子を検索するとともに,本菌の上皮バリア突破機構との関連性を検証した.TCJ構成分子であるLSRの組換え体と反応する化膿レンサ球菌の菌体表層タンパク質を免疫沈降により回収し,ヒスチジン三連構造を有する HtpA をLSR 結合分子として同定した.LSRとHtpAの相互作用はSPR解析およびELISAで評価した.また,腸管上皮細胞であるCaco-2をトランスウェルフィルターシステムで培養し,in vitro上皮バリアモデルとした.この上皮バリアモデルに,野生株とHtpA欠失株をアピカル部位から感染させ,細菌の下部チャンバーへの到達を上皮バリア通過能として評価した.その結果,HtpA欠失株の上皮バリア通過能は,野生株と比較して有意に低下した.また,化膿レンサ球菌感染細胞におけるZO-1,トリセルリン,オクルディンやE-カドヘリンなどの細胞間接着分子の分解は,HtpAの欠失により著しく抑制した.以上の結果から,化膿レンサ球菌はHtpAのLSR結合能を利用することで,TCJに優先的へ局在し,細胞間接着分子の傷害によりTCJから上皮バリアを突破することが示唆された.
2: おおむね順調に進展している
化膿レンサ球菌の表層タンパク質HtpAをLSR結合分子として同定し,両タンパク質の相互作用を確認した.また,化膿レンサ球菌の上皮バリア突破にはHtpAが関与することを明らかにしたため,おおむね順調に進展している.
肺組織三次元モデルを構築し,HtpAが肺上皮バリアの破綻に及ぼす影響を検討する.また,劇症型レンサ球菌感染症の病態形成へのHtpAの関与をマウス感染モデルで検証し,感染防御抗原としての可能性についても検討する.
平成30年度にLSR結合分子が劇症型レンサ球菌感染症の病態形成に及ぼす影響をマウスモデルで検討する予定であったが,培養細胞モデルを用いた感染実験に時間を要したため,マウス感染実験は次年度に行うように研究計画を修正した.このため,次年度使用額が生じた.
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すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 3件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 13件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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