研究課題/領域番号 |
17K11612
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
稲葉 裕明 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70359850)
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研究分担者 |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30359848)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Porphyromonas gulae / 付着侵入 / 歯肉上皮細胞 / 線毛 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
本研究費では、動物由来歯周病菌Porphyromonas gulaeのヒト歯肉上皮細胞への感染を解析し、本菌による歯周病発症を詳細に理解することと、その制御法の開拓につながる知見を得ることを目的としている。
P. gulae は線毛サブユニットFimA遺伝子(fimA)の塩基配列の違いに基づき線毛を3つの型(A, B, C型)に分類しされている。しかし、線毛型の相違が本菌の病原性に及ぼす影響については不明である。本年度研究は、P. gulaeの歯肉上皮細胞の付着侵入と線毛タイプ別の影響を検討し、線毛ノックアウト株の作製を行った。ヒト歯肉上皮細胞株Ca9-22株(ヒト歯肉癌由来)を使用し、Ampicillin/Gentamicin protection assayにより、P. gulaeの歯肉上皮細胞の付着侵入を解析した。付着侵入の基礎データを収集するため、感染時間ならびに菌量(multiplicity of infection(MOI); 細胞1つあたりの感染する菌量)を検討した。さらにA型、B型、C型線毛保有株2株ずつを用いて線毛タイプ別付着侵入能の違いを検討した。P. gulaeは感染60分後、最も歯肉上皮細胞に付着し、感染90分後に最も侵入することが明らかになった。またMOIは100が最も侵入効率が高いことも合わせて明らかになった。線毛ノックアウト株の作製をするため、線毛遺伝子(fimA;既知領域)のプロモーター領域を含む上流約1000bpと下流約500bpの塩基配列を決定した。さらにノックアウト株の選択を行うため、エリスロマイシンカセットのプラスミドを作製しているところである。現在は、線毛遺伝子プロモーター領域と下流領域との間にfimA遺伝子箇所をエリスロマイシンカセットに入れ替えたコンストラクトを作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト歯肉上皮細胞を用いたP. gulaeの付着侵入能の解析は、おおむね順調に進展している。本年度研究では、P. gulaeが保有する付着侵入の基礎データを収集し、線毛遺伝子別の付着侵入能を明らかにすることができた。一方、線毛ノックアウト株は、線毛遺伝子のプロモーター領域を含む上流約1000bpと下流約500bpの塩基配列を決定するのに、やや時間を要した。現在、抗生物質カセットのクローニングを行い遺伝子導入用コンストラクトを作製中であるが、やや遅れ気味かと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
走査型ならびに透過型電子顕微鏡による歯肉上皮細胞への付着状態ならびに侵入を観察する。続いてヒト歯周病菌P. gingivalisと動物由来歯周病菌P. gulaeとの歯肉上皮細胞への付着侵入能の違いを観察し、Porphyromonas属間の付着侵入能の違いを確認する。さらにマイクロアレイによる遺伝子プロファイルもしくは阻害剤を用いた付着侵入能の解析を行い、付着侵入に関係する経路を決定する。また線毛ノックアウト株の作製を完成する予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度では、線毛遺伝子ノックアウト株作成のために線毛遺伝子の上流部と下流部に該当する未知の塩基配列をクローニングしていた。しかしながら、塩基配列のクローニングが困難を極め、同実験に該当する経費を未使用にしたため次年度使用額が生じた。一方で、昨年度中により確実に未知の塩基配列をクローニングする方法を確立することができた。平成30年度では、今回生じた次年度使用額の経費を未知の塩基配列をクローニングする実験に充当する予定にしている。
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