研究課題
本研究費では、動物由来歯周病菌Porphyromonas gulaeのヒト歯肉上皮細胞への付着侵入能を解析から歯周病発症との関連性を理解し、その制御法につながる知見を得ることを目的とした。P. gulae は線毛タンパクを構成するFimA遺伝子の塩基配列の違いに基づき3タイプ(A, B, C型)の線毛が存在する。P. gulae 各線毛タイプ株のヒト歯肉上皮細胞株Ca9-22株(ヒト歯肉癌由来)への付着侵入をアンピシリン/ゲンタマイシンプロテクションアッセイを用いて解析した。P. gulae はA型線毛株: ATCC 51700株とDO66株、B型線毛株: DO40株とDO44株、C型線毛株: DO49株とST9-1株の各線毛保有株2株ずつにより解析を行った。実験上における付着侵入能の条件では、P. gulae は多重感染度100での感染で最も歯肉上皮細胞へ付着侵入し、付着能は感染後60分、侵入能は感染後90分でピークに達することを明らかにした。P. gulae全ての菌株が歯肉上皮細胞に付着するが、C型線毛保有の2株とB型線毛保有株1株のみ細胞内に侵入することが明らかにした。P. gulaeの歯肉上皮細胞への付着侵入は、インテグリンα5β1を介し、細胞膜のアクチン重合ならびに細胞内の様々なシグナル伝達や代謝の調節因子が関与することを明らかにした。さらにP. gulaeが保有するプロテアーゼが関与することも明らかにした。走査型ならびに透過型電子顕微鏡により、歯肉上皮細胞への付着過程だけでなく、細胞内への侵入後は細胞質内で小胞内に取り込まれることを可視化した。また、C型線毛保有株の侵入能は、ヒト由来歯周病菌P. gingivalis 菌の中で、最も宿主傷害能を有するII型線毛保有株と同等の侵入能を有することから、歯周病発症に関わる口腔細菌であることが示唆された。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 3113
10.1038/s41598-020-59730-9
Journal of Oral Science
巻: 62 ページ: 206-211
10.2334/josnusd.18-0483
PLoS One
巻: 14 ページ: e0213309
10.1371/journal.pone.0213309
Veterinary Microbiology
巻: 229 ページ: 100-109
10.1016/j.vetmic.2018.12.018