研究課題
骨芽細胞の運命は,大多数がアポトーシスを起こし,一部はさらに骨細胞へと分化し,その他は休止期骨芽細胞として骨表面を覆う。また,加齢や病態に伴い,骨芽細胞が脂肪細胞へと分化転換する例も報告されている。本研究では,骨芽細胞が辿る運命過程を遺伝子発現の変化から追い求め,運命決定の鍵となる制御機構を見出すことを目的として,骨芽細胞のトランスクリプトームをシングルセルレベルで解析した。骨芽細胞は,4つのクラスターに分類され,そのうち3つのクラスター(クラスター1~3)は骨芽細胞マーカーの発現に類似性を示し,残り1つのクラスター(クラスター4)は明確に異なった。細胞間の不均一性をピアソンの相関係数で定量したところ,幅広い広がりを見せ(相関係数 r = 0.15~0.89),そのほとんどがクラスター4に起因していた。各クラスター特異的に発現する遺伝子を同定し,既知のマーカーに基づく擬似時間解析により,クラスター1~3は異なる分化段階の骨芽細胞を捉えていることが示された。しかし一方で,分化段階とは関係なく,遺伝子発現に広範な不均一性を示すことも明らかとなった。加重遺伝子共発現ネットワーク解析の結果,これらのクラスターでは,タンパク質合成や小胞体とゴルジ体間のタンパク質輸送に関わる遺伝子が発現していることが示された。クラスター4の細胞は間葉系幹細胞や骨芽細胞前駆細胞に発現するCd34とCxcl12を発現し,骨芽細胞マーカーの発現は比較的低レベルであった。この細胞が活発に骨を形成する骨芽細胞とは異なり,幹細胞や前駆細胞の性質を保持または再獲得していると考えられた。以上の結果から,骨芽細胞における遺伝子発現の不均一性は,骨芽細胞の機能的・発生的運命の多様性の根底にあるものと示唆された。
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