研究課題/領域番号 |
17K11614
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小川 郁子 広島大学, 病院(歯), 講師 (70136092)
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研究分担者 |
北川 雅恵 広島大学, 病院(歯), 助教 (10403627)
安藤 俊範 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 助教 (40754552) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 病理診断 / 唾液腺腫瘍 / 歯原性腫瘍 / 分子生物学的診断 / タンパク発現 |
研究実績の概要 |
組織像が多彩で,異なる腫瘍型間に共通する組織像の存在や炎症による修飾のため,形態のみによる確定診断が困難な症例がまれではない唾液腺ならびに歯原性腫瘍を対象に,客観性のある,精度の高い病理診断の実施を目指し,形態とタンパク発現に融合遺伝子などの遺伝子を対象とした検討を行っている.平成29年度は,これまでの知見を実際の症例に応用し,論文作成と学会発表を行った.形態学な共通性の多い腺性歯原性嚢胞と顎骨中心性粘表皮癌についてPCRによるCRTC3-MAML2の検出とFISHによるMAML2再構成の確認により,腺性歯原性嚢胞から粘表皮癌が発生したことを証明した.また,腺上皮と筋上皮細胞からなり,細胞異型に乏しく,被膜で囲まれて良性腫瘍を思わせる唾液腺腫瘍について MYB再構成をFISHで確認し,腺様嚢胞癌の診断を確定した.WHO2017で新規に採択された原始性歯原性腫瘍について形態学的な特徴をタンパク発現も加えて検討し,論文とした.この症例を含めた複数例の遺伝子解析は他施設で実施中である.エナメル上皮腫については,BRAFV600Eの発現とそれを標的とした分子標的治療の可能性を検討するため,まず,培養細胞を樹立し,その特性を解析した.融合遺伝子の形成によるタンパク発現の異常を対象とした免疫染色所見が診断補助として有用であるかを検討するため,2つの腫瘍型について検討した.CRTC1-MAML2の下流に位置するamphiregulinの発現を融合遺伝子陽性と陰性の粘表皮癌症例を対象として検討した結果,CRTC1-MAML2陽性5症例では4例でamphiregulinの過剰発現を認め,一方、陰性8例では過剰発現は1例のみであった.ETV6-NTRK3融合遺伝子の存在が特徴である分泌癌についてはリン酸化STAT5の発現を検討し,分泌癌2例は陽性,腺房細胞癌,多形腺腫,粘表皮癌10症例は,いずれも陰性であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際の症例に対して融合遺伝子の検索により診断を確定することができた.遺伝子異常によるタンパク発現を用いることによる診断の補助についても検討を行っている、
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,非特異的な組織像を呈し,鑑別の困難な腫瘍症例を収集して実際の症例への応用を増やすのに加えて,歯原性腫瘍については,本年度に準備をしているエナメル上皮腫や原始性歯原性腫瘍の遺伝子異常について検討を進める.また,タンパク発現に関しても,腫瘍型,症例数を増やして検討を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
適切な抗体などの検討と購入に時間を要したためである.
平成30年度に予定している抗体などを購入する.
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