研究課題
鑑別診断が問題となる歯原性腫瘍,唾液腺腫瘍を対象に客観的で精度の高い診断基準を目指し,形態学的特徴と遺伝子変化について検討を行っている.歯原性腫瘍では①腺腫様歯原性腫瘍AOTの遺伝子変化について検討し,9例中7例にKRASコドン12のミスセンス遺伝子変異(4例:G12R、2例:G12V,1例:G12D)が確認された.この変化によりMAPK/ERK経路の活性化が生じ,AOTの発生に関わることが示唆された.エナメル上皮腫で認められるBRAFV600E遺伝子変異は全例陰性であった.②嚢胞形成が目立ち,形態学的には診断困難であった腫瘍ではEWSR1-ATF1融合遺伝子を確認し,明細胞性歯原性癌CCOCと確定した.BRAFV600E遺伝子変異は認めなかった.CCOCでの嚢胞形成はまれであり,組織像の多彩性についての周知に有用な例であった.唾液腺腫瘍では①乳頭状唾液腺腺腫SP10例中7例、SPと類似の腺管が増殖する2例ではどちらにもBRAFV600E遺伝子変異を特異的に認めた(9/12例).この遺伝子変異は表面の外向性増殖部,深部の腺管形成部のいずれにも存在していたが,腺管の外層を形成する細胞には認めなかった.そのほかの乳頭嚢胞状腫瘍はすべて陰性であった.②形態学的には腺リンパ腫LAの定型像を示す症例に粘表皮癌に特徴的なCRTC1-MAML2融合遺伝子を認めた.LAは独立した腫瘍型か,リンパ組織性間質を伴う粘表皮癌の一種か,今後の検討の課題となる結果であった.③分泌癌SCの確定に必要なETV6-NTRK3融合遺伝子の代替マーカーとしてリン酸化STAT5Aの有用性について症例数を増やして検討し,特異性を確認した.④腺様嚢胞癌AdCCの一部に唾液腺導管癌SDCに類似した組織像を呈する症例では,AdCCに高率に認められるMYB rearrangementがSDC様の領域にも確認された.
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