研究課題
歯の発生は肥厚した上皮の間葉組織への陥入により始まり、上皮組織と間葉組織がダイナミックに作用し合いながら複雑な歯の形態を形成していく。このことから、力学的な機械刺激の圧受容体であるメカノセンサーPiezo1の役割について着目し、歯の発生への影響を検討している。これまでに、胎齢15日マウスの歯胚におけるPiezo1のsiRNAを用いた阻害実験により、エナメル蛋白と象牙質基質蛋白の発現への影響を検討した。そこで、今年度はPieozo1のアゴニストを用いて歯原性上皮細胞やマウス胎生15日齢の歯胚の器官培養実験により、Piezo1の機能解析を行った。まず、歯の上皮細胞株であるmDE6において、Piezo1のアゴニスト添加によるカルシウムイメージングを行ったところ、アゴニスト濃度依存的に細胞内のイオン流入が増加し、Piezo1のsiRNAによる抑制によりその効果は減弱した。次に、Piezo1アゴニストを用いた細胞増殖実験では、アゴニスト導入群はコントロール群と比較して増殖に影響を及ぼした。さらに、Piezo1アゴニストを用いた歯胚の器官培養実験では、real-time PCRによる定量解析にてエナメル蛋白の発現パターンに影響を及ぼし、エナメル芽細胞の分化に関わる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
細胞培養の実験において、Piezo1アゴニストを用いた増殖については、スムーズに実験結果を得られたが、Piezo1siRNAを用いた増殖実験も行っており、その結果を得るために何度も施行した。また、器官培養を用いた実験において、濃度条件の設定やサンプルの回収と解析に時間を要した。
アゴニストやアンタゴニストを用いた器官培養実験において、HE染色を行い組織形態学的に検討する。また、エナメル質分化マーカー等の発現局在を免疫組織化学的に検討する。
細胞培養の実験において、増殖等についての結果の確定のため何度も施行した。また、器官培養を用いた実験において、サンプルの回収および解析に時間を要した。さらに免疫染色などのデータを追加する必要がある。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Lab Invest.
巻: 100(2) ページ: 311-323
10.1038/s41374-019-0357-z