研究課題/領域番号 |
17K11619
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
仙波 伊知郎 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (60145505)
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研究分担者 |
嶋 香織 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10343526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 口腔粘膜前癌病変 / 上皮内癌 / 上皮性異形成 / 免疫染色パタン / 病理診断基準 |
研究実績の概要 |
これまでに本学に蓄積された口腔粘膜早期浸潤癌、上皮内癌、上皮異形成症、肥厚性カンジダ症、炎症性上皮過形成の症例から各30症例(計150症例)を電子化された症例データベースから抽出し、連結可能匿名化処理を行い、臨床病態(年齢、性別、部位、肉眼形態、病悩期間、既往歴、習慣、治療法、臨床的予後)の記録とともに病理組織像を再評価した。また、対象症例標本はヴァーチャルスライドシステムにより電子画像化した。 病理組織所見は上皮の各層における細胞異型と構造異型について評価し、さらにPara-MateとDecloaking Chamberを導入し、条件を均一化した免疫組織化学染色(CK13, CK17, Ki-67, TP53, p16)により、その発現パタンについて、以下の知見を得た。 (1) CK13とCK17は、正常と上皮異形成等の境界の同定に有用で、特に明瞭なフロント形成は上皮内癌に認める。(2) Ki-67は、正常では1層目5%、2層目90%の細胞に陽性で、特に1層目の発現減弱パタンは上皮内癌には認めない。(3) Ki-67は、上皮異形成と上皮内癌では1層目の発現頻度亢進(50%以上)を認める。(4) Ki-67は、上皮内癌では重層化(連続性、散在性)を認める。(5) TP53は、正常、反応性異型、上皮異形成では散在性の陽性を認める。(6) TP53は、上皮内癌では、境界を持つ重層化を認める。(7) TP53は、正常部と比較した亢進と減弱の判定が必要である。(8) p16は、病変と発現に一定の相関を認めない。(9) 扁平上皮癌の上皮内進展と上皮内癌の鑑別には、構造異型のパタンが有用である。 これらの免疫染色パタンを複合的に組み合わせることにより、上皮内癌と上皮異形成の鑑別に有用な診断基準が提唱できる見込みが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最も重要な口腔粘膜前癌病変の病理診断の診断基準の提唱に繋がる基本的な免疫染色の複合的パタンを見出すことが出来たことは、今後の研究の展開を確実なものにする事が出来る。これらのパタンを用いて診断を進める際に必要な重み順位について、多変量解析による因子分析の項目とノンパラメトリック解析項目の設定も可能となった。 一方で、TP53の非腫瘍性病変での免疫染色評価について、遺伝子変異の有無に関する裏付けを各症例で行う予定であるが、本年度は症例の選択に留まり、実施には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後、症例数を追加確保すると共に、課題として残されたTP53遺伝子変異を網羅的に解析できるアレイにより変異の有無を検出し、免疫染色パタンの裏付けを行う。さらに、当初の計画であるエピジェネティック解析を行い、見出した診断基準に基づく診断と予後に関連するエピジェネティック変異遺伝子を探索する。 また、多変量解析により、診断項目の重みと順位に関する因子分析を実施し、実際的な診断手順について提唱する際の根拠とする。
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