研究実績の概要 |
【方法】2014年以降に前癌病変等と病理診断された200例(上皮肥厚71例、軽度上皮異形成30例、高度上皮異形成46例、上皮内癌53例)を抽出し、病理組織像の再評価と免疫染色マーカーCK13、CK17、Ki-67、TP53の発現パタンをカテゴリ分類(4マーカに各4項目)し、各病変間の判別を多変量解析(尤度漸増法による二項、多項ロジスティック回帰分析、SPSS Ver 24, IBM)で検討した。 【結果】1)正常上皮ではKi-67は第1層の5%、第2層の90%に陽性を示した。TP53は第1・2層に散在性に弱陽性、CK13は第1・2層以外の全層に均質に強陽性、CK17は全層で陰性であった。正常発現パタンに口腔粘膜の部位差は認めなかった。2)Ki-67の異型発現パタン(第1層の増加、第1層の増加と第2層の減少、重層化)の出現頻度は、4分類の各病変に対応し異なっていた。TP53はHEDとCISに高頻度に重層化がみられた。CK13はCISで均質な減少パタンの頻度が高く、CK17は病変進行度と共に発現強度の増加傾向が見られた。3)4分類病型における各マーカーの異型発現パタン出現頻度の多項ロジステック回帰分析では、EHPとCISの的中精度は90.1%、96.2%と高かったが、LEDは43.3%と低かった。また、軽度異形成群と高度異形成群の2分類では、92.1%、89.9%と高い的中精度を示した。いずれもKi-67とTP53が判別への有意な寄与を示し、CK13とCK17の寄与は低かった。4)4分類の各病型間の2項ロジステック回帰分析では、75.2%、78.9%、87.9%の的中精度で、どの病型間でもKi-67とTP53の組み合わせが判別に有意であり、特にKi-67のオッズ比は最も高く、次いでTP53であり、HEDとCIS間の判別にはKi-67とTP53と共にCK13も有意であった。
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