研究課題/領域番号 |
17K11622
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
松尾 拡 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70238971)
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研究分担者 |
渡邉 誠之 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (10201196)
古株 彰一郎 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (30448899)
自見 英治郎 九州大学, 歯学研究院, 教授 (40276598)
矢田 直美 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (60468022)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / BMPシグナル / 細胞の形態変化 / がんの浸潤 |
研究実績の概要 |
マウス悪性黒色腫株B16を処理したところ、間葉系細胞用形態に変化した。さらにBMPのI型受容体の一つであるALK3の構成的活性型受容体遺伝子(Ca ALK3)を過剰発現してBMPシグナルを活性化した細胞も同様に間葉系細胞様形態に変化した。またBMPのI型受容体のキナーゼ阻害剤のLDN-193189で処理した細胞ではBMP2を添加しても細胞の形態変化を誘導しなかった。すなわち, BMPシグナルは悪性黒色腫B16細胞の形態を間葉系細胞用形態に変化させることが明らかとなった。 次にBMPシグナルが誘導するB16細胞の形態変化が上皮間葉移行(EMT)かどうか検討した。BMP2処理をして形態変化したB16細胞のE-cadherin、 N-cadherin、 Vimentin、およびSnailのmRNAを定量した。するとBMP2により形態変化したB16細胞ではコントロール群にくらべて上皮系細胞マーカーのE-cadherinの発現レベルが低下したのに対し、間葉系細胞マーカーのN-cadherin、VimentinおよびSnailの発現が上昇した。すなわち、BMPシグナルによるB16細胞のEMTを誘導し、形態変化を引き起こすことがわかった。 さらにBMP処理したB16細胞では, ゼラチンコートを破り浸潤する細胞数がコントロールに比べて増加することがわかった。がんの浸潤に関与するMMP9の発現を検討したところ, BMP処理したB16細胞ではMMP9のmRNAおよびタンパク量が増加し、さらにゼラチンザイモグラフィーアッセイからMMP9の活性も上昇していることを突き止めた。すなわち、BMPシグナルはMMP9の発現を上昇し、その結果、浸潤能が亢進すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性黒色腫は、メラニン色素産生能を持つメラノサイトから発生する腫瘍で皮膚に好発し、早期にリンパ行性または血行性に転移する悪性腫瘍であり、転移には細胞のEMTによる細胞の形態変化、移動、浸潤能の亢進が知られている。 当初の研究計画に従って、我々はすでにマウス悪性黒色腫細胞株B16細胞を用いた実験から、BMPシグナルが悪性黒色腫におけるEMTのインデューサーであることを突き止めた。さらに、現在動物実験の準備も順調にしている。よって、本研究の進捗状況は概ね順調であると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
申請した実験計画書に従って、今後はin vivoにおける悪性黒色腫の顎骨浸潤・転移におけるBMPシグナルの役割を検討する。昨年度に樹立したBMPシグナル構成的活性型B16細胞株をマウス咬筋部に摂取し、顎骨に対する浸潤をμCT画像や組織学的、分子生物学的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初本年度解析予定だったものが、次年度に施行することにしたため、それにともない、かかる費用を次年度に繰り越すこととした。
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