研究課題
悪性黒色腫はメラニン産生能をもつメラノサイトから発生する悪性腫瘍である。皮膚や口腔粘膜上皮に発生し、早期に周囲組織に浸潤し、転移しやすく悪性度が高い。口腔粘膜に発生する悪性黒色腫は皮膚のものと比べ予後不良であるが、発症頻度が全悪性黒色腫10%前後と低いため研究があまり進んでいない。また、悪性黒色腫の進行にはBMPシグナルの関与が示唆されているが依然として不明な点が多い。前年度までに、培養細胞を用いた実験から、マウス悪性黒色腫細胞株B16をBMP2やBMP4処理すると間葉系細胞形態に変化した。また形態変化した細胞では上皮系細胞マーカーの発現が低下し、間葉系細胞マーカーの発現が上昇した。また、構成活性型ALK3受容体を恒常的に発現するB16細胞を作製した。すると、このBMPシグナルが活性化した細胞は間葉系細胞様に形態が変化し、移動能・浸潤能の亢進が認められた。これらデータに基づき、当該年度はin vivo実験を行った。8 ~ 10 週齢のマウスをペントバルビタールの腹腔内投与による麻酔下でDMEMに懸濁したB16細胞(1.0 x 105/ ml) を50 μl左咬筋部に接種した。細胞接種3週間後にイソフルランの過量吸入により安楽死させた後, 腫瘍サイズを測定した。さらに顎骨頭蓋骨をμ-CT撮影装置 で撮影し3D画像を構築した骨破壊を評価した。するとBMPシグナルが活性化したB16細胞はコントロール細胞に比べて腫瘍が増大し骨破壊が亢進する結果が得られた。以上の結果から、もし悪性黒色腫細胞特異的にBMPシグナルを抑制することができれば画期的な悪性黒色腫治療法の開発に繋がるかもしれない。
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Oncotarget
巻: 10 ページ: 404-414
10.18632