研究課題/領域番号 |
17K11624
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (20190100)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Her twig上皮鞘 / Malassezの上皮遺残 / 細胞遊走 / IGF-I / セメント質形成 |
研究実績の概要 |
Hertwig上皮鞘(HERS)からMalassezの上皮遺残(ERM)が形成されるメカニズムの解析を目的に研究を継続しているが、より効果的にERMを観察するために、HERSからERMへ移行する過程を促進する因子と、その作用についての解析を行った。これまでの我々の研究によってHERSが形成されるタイミングでinsulin like growth factor-I (IGF-I)受容体がHERS細胞に発現する事を報告しており、オリジナルの器官培養系を用いて、生後20日齡のマウス下顎臼歯歯胚に外因的にIGF-Iを添加して培養した。IGF-Iの添加によりHERS形成初期でみられたHERS内層と外層の細胞増殖は本実験系において共にダウンレギュレートされ一方で、有細胞セメント質基質の形成を促進する事が分かった。有細胞セメント質形成には歯根膜のセメント芽細胞が歯根象牙質に接触する必要があるが、この接触を促進するためにはHERSの断裂も促進する必要がある事から、連続切片を作成し詳細な検討を行った結果、IGF-Iは歯頸側のHERSにおける断裂、すなわちERM形成を促進する事が明らかとなった。また形成されたERMは対照群のみならず、intactな生後24日齡の臼歯に比べても約3倍に増加していた他、より大きな細胞集団のERMが多数観察された。この事は今後の観察において、IGF-Iを添加した培養下で実験を行う事で、周囲の歯根膜細胞からERMを判別することも容易になると言う利点を持った実験系を確立できたと考えられる。一方、アレイトモグラフィー法による観察において、cytokeratin-Tomato陽性細胞による検出より免疫染色の方がより鮮明にERMを判別できる事が明らかとなり、今後これらの実験系を合わせて解析を勧める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
器官培養下で、標的細胞であるMalassezの上皮遺残(ERM)を増加させ、サイズも大きくする事で、これまでよりERMが捉えやすい実験系が確立できた。これは予定された実験計画書には記載されていない事であったが、別の実験系からの結果を応用したものである。当初の予定ではk14cre/Rosa26R tdTomatoマウスの歯胚を用いてアレイトモグラフィー法を実施する予定であった。しかし、このマウスからの細胞はリアルタイムイメージングでの観察には有効であったが、解析のためのアレイトモグラフィー法には適さない事が判明した。今回の実験結果はこれを補い、別のアプローチで当初の計画に類似した実験系の構築に貢献できる結果である。このことから、計画変更はあったものの、研究は順調に進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に明らかとなった当初計画の実験系の不具合を、オリジナル器官培養法に外因性のIGF-Iを添加する事で、ほぼ克服できる事を示す事ができた。さらに、IGF-Iの添加はMalassezの上皮遺残(ERM)をより形態学的に判別しやすくできる事も明らかとなり、ERMをアレイトモグラフィー法で効果的に捉えることができる実験系を確立できたと考える。そのため、多少検出方法の違いはあるものの、今後予定した実験計画に近い形で、ERMの細胞を形態学的に確認しつつ、細胞特性を検索する研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に本研究に関係する論文を投稿したが、雑誌の発行が年度末になってしまった。そのため、英文校閲や投稿料を本研究費から支出する事を想定して使用を控えていた事から残金が発生してしまった。しかしながら、この件以外の消耗品の使用に関しては概ね、予定通り進んでいると考える。今後の使用は消耗品の使用が主となるが、研究計画に沿って実施していく予定である。
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