研究課題/領域番号 |
17K11626
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
天野 修 明海大学, 歯学部, 教授 (60193025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | メッケル軟骨 / セプトクラスト / 脂肪酸結合タンパク質 / 軟骨吸収 |
研究実績の概要 |
表皮型脂肪酸結合タンパク質(E-FABP)に対する特異抗体を用い免疫組織化学的染色を行い,発現と分布を検索したところ,胎齢16日のマウス胎仔メッケル軟骨の吸収面に初めてE-FABP免疫陽性の短い突起を有する小型の単核細胞が認められた。二重染色法により,同細胞セプトクラストに特異的に発現すると報告されているCathepsin BとDBAレクチンとも共局在することが示された。E-FABP免疫陽性細胞の突起は,トルイジンブルー陽性でvon-Kossa染色陰性の未石灰化軟骨基質に向かって伸展し,その細胞体は血管内皮細胞に隣接していた。これらの免疫組織化学的特徴と未石灰軟骨基質や血管内皮細胞との関係から,E-FABP陽性細胞は骨端板で認められたセプトクラストであることが分かった。 胎齢17日でも吸収面にセプトクラストが同様に認められたが,胎齢18日ではその数が減少した。破軟骨細胞(酸性ホスファターゼ陽性)はセプトクラストより吸収面から遠い場所に局在していたが,マクロファージ(FA40陽性)は近傍に認められなかった。共焦点レーザー顕微鏡による三次元的形態解析では,メッケル軟骨のセプトクラストは数個の短い突起をもった単核性の紡錘形細胞であることが分かったが,胎齢18日では突起を持たないタイプ等,様々な形態が認められた。 以上の結果から,セプトクラストはマウスメッケル軟骨の消失過程で、メッケル軟骨吸収面最前方部で、血管内皮細胞と隣接し存在し、他の軟骨組織吸収細胞と連動して軟骨組織の吸収に関与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス胎仔の胎齢13~14日ではメッケル軟骨中心部の軟骨細胞にHIF-1αに対するやや弱い免疫活性が認められたが、軟骨膜に近い周辺部には認められなかった。胎齢15~18日では小型軟骨細胞と前肥大軟骨細胞に免疫活性が認められた。低酸素群の培養胎仔下顎は対照群と比較して小さく、メッケル軟骨は静止期に相当する小型の軟骨細胞が多数を占めたが、対照群では前肥大軟骨細胞も認められた。低酸素群は対照群よりも強いHIF-1α免疫活性もつ軟骨細胞が多数認められた。 メッケル軟骨の発生では、生理的な低酸素環境に対してHIF-1αを発現して対応するが、低酸素下ではさらに強い発現が誘導され、肥大化が阻害されて静止期が維持されることが示唆された。HIF-1αは正常なメッケル軟骨の形態形成や消失に重要な役割を担うと考えられた。 しかし,低酸素下でのマウス胎仔第一鰓弓の器官培養で,器官培養後の下顎の形態変化の変異の幅が大きく,安定して一定の傾向を得るために培養条件等の再検討を行っている。現在,一応の上記のような結果を得られたが,統計等でのデータの幅が大きく,十分な有意差を得られないため,さらなる条件検討を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
無血管の軟骨組織は他組織より低酸素に陥り易く、低酸素抵抗性を備えていると考えられる。低酸素環境で誘導されるHIF-1αについて、マウス胎仔のメッケル軟骨における発現と変動を器官培養系を用いて調べる。固定した胎齢13日(E13)~E18のマウス下顎の水平断切片を作成し、抗HIF-1α抗体を用いて免疫組織化学を行う。さらに、E10の第1鰓弓を摘出し、1%酸素分圧に調整した低酸素チャンバー内で、無血清培地で37℃、5%二酸化炭素分圧で10日間培養する。上記記載のように安定性にまだ難があるので,さらに条件変更を行って再実験をおこうなう予定である。 また,骨端板のセプトクラストが血管周皮細胞由来であることが分かったので,メッケル軟骨のセプトクラストについてもその由来と分化機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養条件再検討の為,培養に必要な消耗品(試薬,シャーレ等)の購入が減ったために使用予定額を下回った。培養条件の検討終了の目途は立ったので,培養実験再開により消耗品が必要になるので,それに充てる。予定していた使途に変更は無い。
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