研究課題
肺炎は日本において死因別死亡率で第3位を占める感染症で、年齢と共に肺炎での死亡率は増加している。肺炎の主要な原因細菌は、肺炎球菌や肺炎桿菌であるが、検体中からは口腔内の歯周病原性細菌の検出が報告されている。しかしながら、肺炎感染において歯周病原性細菌が共作用した場合の病原因子は明らかとなっていない。そこで本研究では、肺炎球菌および肺炎桿菌感染における歯周病原性細菌の役割を解明するために、歯周病原性細菌の産生する物質に着目し、肺炎の病態(感染成立や病巣の拡大)における相互作用を解明する。申請者らは本研究期間に、歯周病原性細菌のnucleaseの分子生物学的な解析を行い、感染に重要な因子であることを同定した。続いて、この歯周病原性細菌の産生するnucleaseが肺炎の病態形成に果たす役割を培養細胞系およびマウス感染モデルを用いて解明するこために、自然免疫系の細胞であるマクロファージの培養細胞と上皮系培養細胞を用いて、nucleaseの肺炎球菌と肺炎桿菌の定着に及ぼす影響を解析してきた。今年度(最終年度)は、昨年度から引き続きマウスの感染実験を進めており、歯周病原細菌存在が肺炎球菌および肺炎桿菌感染へ及ぼす影響を解析した。また無菌マウスに歯周病原細菌を含むヒト口腔細菌を定着させたマウスを作製し、口腔細菌の肺炎への影響を解析した。平成29年度の育児休暇および令和2年度の緊急事態宣言下での動物の搬入飼育制限のため、当初の予定より2年遅れて計画を進行したが、マウス感染実験については研究期間中に最終的なデータを得ることができなかったため、継続して研究を行う予定である。
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日本口腔科学会雑誌
巻: 70 ページ: 254-261
10.11277/stomatology.70.254