研究課題/領域番号 |
17K11630
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
松坂 賢一 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (70266568)
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研究分担者 |
井上 健児 東京歯科大学, 歯学部, ポストドクトラル・フェロー (00624636) [辞退]
中島 啓 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (20733463)
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 分化誘導 / 象牙芽細胞 |
研究実績の概要 |
歯周疾患に罹患した場合、エナメル質と付着上皮の結合が破綻し、その治療後においても付着上皮の再生は全く望めない。本研究の目的である付着上皮再生による歯周組織完全再生のために、今年度はiPS細胞の歯原性細胞への分化誘導に関して実験を行った。エナメル質と結合する付着上皮は歯の形成期の状態を萌出後にも維持させていることからエナメル芽細胞への分化誘導のためには象牙質が必要である。まずはiPS細胞の象牙芽細胞分化および象牙質形成を試みた。そして、歯と歯槽骨を連結している歯根膜内に存在するマラッセの上皮遺残細胞とiPS細胞との共培養によるiPS細胞の間葉系細胞への誘導あるいは上皮系細胞への誘導の可能性について検索を行った。 マウスiPS細胞の細胞懸濁液を96ウエルプレートに播種し、胚葉体形成後に、レチノイン酸添加培地にて浮遊培養した。その後、BMP-4添加培地およびI型コラーゲンコートディッシュ内で付着培養させ、象牙芽細胞への分化誘導を行った。神経堤細胞マーカーでもあるSOX-10ならびにNGFR、象牙芽細胞マーカーであるDSPPとDMP-1、骨系細胞マーカーであるbone sialoproteinおよびosteocalcinのmRNA発現が上昇することを確認した。さらに、レチノイン酸添加後にSOX-10とNGFRの発現上昇を認め、BMP-4添加、I型コラーゲンコートディッシュ上での培養するとDSPPおよびDMP-1の発現が確認された。一方、bone sialoproteinとosteocalcinの発現が低下していた。象牙芽細胞は神経堤由来の外胚葉性間葉細胞が由来であるが、iPS細胞の象牙芽細胞への分化誘導においても同じ分化系列を示すことが明らかとなった。また、マラッセの上皮遺残細胞の存在によりiPS細胞の間葉系細胞、特に骨性細胞への分化が促されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの歯周病治療はエナメル質と付着上皮の結合なくして完了していたが、本研究では歯周病治療の最終段階をエナメル質と付着上皮の結合による完全再生を目指している。しかし、上皮の結合を完成するためには、間葉系細胞および組織のコントロールが必須である。現在まで、iPS細胞の間葉系細胞である象牙芽細胞への分化誘導を試みた。その結果、レチノイン酸およびBMP-4添加培地によりiPS細胞の象牙芽細胞への分化誘導に成功した(Inoue, Matsuzaka et al. submitted)。さらに、歯根膜内に存在するマラッセの上皮遺残細胞とiPS細胞との共培養実験では骨性細胞への分化も確認できた(Naono, Matsuzaka et al, accepted)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、象牙質基質上でiPS細胞の動態検索を行うと同時に、iPS細胞の上皮系細胞への分化誘導に関する実験を行う。生体では象牙質基質の存在により内エナメル上皮がエナメル芽細胞に分化し、エナメル質を形成、そして萌出に伴ってエナメル質と付着上皮の結合を維持したまま歯周組織の一部として機能している。象牙質基質上でのエナメル芽細胞へ分化誘導されたiPS細胞のタンパク発現および基質形成の可能性を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載が次年度となり、それに伴い掲載料の支払いが次年度となったために次年度使用額が生じた。
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