研究課題/領域番号 |
17K11633
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
松本 直行 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20386080)
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研究分担者 |
梁 洪淵 鶴見大学, 歯学部, 講師 (10298268)
内田 仁司 鶴見大学, 歯学部, 学内講師 (20736996) [辞退]
井上 裕子 日本薬科大学, 薬学部, 教授 (50367306)
中山 亮子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (50749843)
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 唾液腺傷害 / EGFR2 / MUC-1 / apoptosis |
研究実績の概要 |
唾液腺組織の傷害と修復機構をin vitro で検討するために、TRECK法を用いて唾液腺組織特異的傷害モデルマウスを作出した。唾液腺特異的に発現するアミラーゼ遺伝子(AMY1C)およびMUC7遺伝子のプロモーター配列をTA-クローニングし、ヒト-ジフテリアトキシン(DT)受容体が組み込まれたTRECKベクター(AMY1C-TRECKおよびMUC7-TRECK)を作製した。野生型マウスはDTに対して非感受性であるためDTを投与しても組織に影響はないが、細胞特異的にDT受容体を発現する遺伝子改変マウスにDTを投与すると、DT受容体を発現した細胞のみが傷害される。 この遺伝子を受精卵へマイクロインジェクションし、遺伝子改変マウスを作出した。トランスジーンの発現が確認されたF0マウスは、AMY1C遺伝子のプロモーター配列を組み込んだ系統は48系統が得られ、そのうち16系統の顎下腺にヒトDT受容体の発現を確認したが、複数の臓器に発現が見られたため、顎下腺に発現が強い1系統を維持している。本系統の顎下腺を摘出し培養液にDTを添加して臓器スライス培養を行ったところ、DT添加群では培養組織に広範な壊死が生じ、顎下腺の組織傷害モデルとして利用できると考えられた。また唾液腺の上皮細胞を特異的に初代培養する方法を確立したため、上記の遺伝子改変マウスに由来する唾液腺上皮細胞を用いたin vitroの実験に応用が可能となった。 一方、MUC-7のプロモーター配列を組み込んだ系統は99系統が得られ、そのうち1匹に顎下腺特異的なヒトDT受容体の発現を確認し、当初の目的であった唾液腺組織特異的傷害モデルマウスの樹立が達成された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に唾液腺組織で発現の高いAMY1C(アミラーゼ)のプロモーター配列を用いて唾液腺組織特異的傷害モデルマウス作出を進めていたが、脳や心臓などの重要臓器でトランスジーン発現が確認されたため、受精卵へのマイクロインジェクションを繰り返したが、唾液腺に発現が強い1系統が得られ、臓器スライス培養を応用した唾液腺傷害モデルの実験系を確立した。 また本年度までに前述のMUC7-TRECKベクターを組み込んだ遺伝子改変マウスの作出を進めたところ、99系統のF0マウスが獲られたのでトランスジーン発現の確認に時間を要したが、唾液腺特異的にトランスジーンを発現する遺伝子改変マウスが1系統得られた。 今後、唾液腺組織に発現しているEGFR2の活性化がミトコンドリアに局在するMUC-1を経て細胞死(apoptosis)を抑制する可能性について詳細を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、唾液腺組織特異的にトランスジーンを発現している遺伝子改変マウス(MUC7-TRECK系統)が得られたため、本系統を用いてマウス生体ならびに唾液腺上皮初代培養細胞におけるheregulin-EGFR2-MUC-1経路によるapoptosis抑制について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように、唾液腺組織特異的にトランスジーンを発現している系統が得られず、実験の進捗が遅れたため繰越金が生じたが、MUC7-TRECKベクターを用いた遺伝子改変マウスの作出に成功した。 今後は上記の遺伝子改変マウスを用いてEGFR-2/MUC-1経路を介したアポトーシス抑制の成立機序をin vivoならびにin vitro実験で進めるために繰越金額を使用する予定である。具体的には、遺伝子改変マウスの維持費用、唾液腺スライス培養ならびに唾液洗浄非特異的な細胞の分取と培養のための培養液と関連試薬、アポトーシス検出試薬および各種抗体を購入する予定である。また、トランスジーンのスクリーニングなど分子生物学的操作に必要な試薬の購入費や、動物飼育費として使用することを予定している。
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