歯周病は多くの国民が罹患する国民的疾患と言える。今まで多くの研究がなされてきたが、歯周病のATP産生機構について十分な知見を得ていない。歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisはグルコースなどの糖のみを炭素源にした場合、糖代謝経路を欠いているためにほぼ生命活動を維持できない。そこで、主にアミノ酸やペプチドを炭素源に生命活動を維持している。歯周病細菌のATPの産生機構は詳細に研究されていないが、アスパラギン酸やグルタミン酸を基質に短鎖脂肪酸を合成する経路から分岐する経路が関与することが予測されてきた。phsophoacetyl transferase(PTA)は無機リン酸存在下において、Acetyl-CoAからacetyl phosphateを産生し、その後acetate kinase(ACK)はacetyl phosphateとADPから酢酸とATPを産生する。本年度それらのPorphyromonas gingivalis由来PTAとACKの生物学的、酵素学的解析を行い、論文発表等を行った。PtaのKm値は72.0 ± 8.1 μMであり、kcat値は1544 ± 109 s-1であった。また、その反応の最適pHは9.0であった。一方、Ackの酵素反応はacetyl phosphateとADPを基質としてping-pong bi-bi反応であり、acetyl phosphateに対するKm値は177 ±51.2 μMであり、kcat値は435.5 ± 32.2 s-1であった。もう一方の基質であるADPに対するKm値は585 ± 19.2 μM、kcat値は421 ± 159.6 s-1であった。その反応の最適pHは8.0であり、MnイオンまたはMgイオンが反応に必要であった。その後、同じRed Complexに属するTannerella forsythiaのAckを精製し、酵素学的解析を行った。この酵素の最適pHは8.0であり、以前の報告と同様に反応にMnおよびMgイオンが必要であった。しかし、Ni存在下において最も活性が高かった。
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