研究課題
本研究は、骨芽細胞の一次繊毛を介したメカニカルストレス応答において、Pontin-Reptinシャペロンがどのような機能を担っているかについて解析を行っている。本年度は、まず、骨芽細胞分化過程におけるPontin-Reptinシャペロンの相互作用因子の単離と同定を行った。MC3T3-E1細胞を骨芽細胞分化誘導し、抗Pontin、抗Reptin抗体をそれぞれ用いて共免疫沈降したタンパク質を質量分析法によって網羅的に同定した。その結果、骨芽細胞分化過程においても、R2TP複合体を形成していること、また、繊毛の形成制御に関与すると考えられるタンパク質と相互作用していることが推察された。現在、メカニカルストレスを負荷したサンプルとのインタラクトームの比較解析を行っている。また、Pontin-Reptinシャペロンの生理学的機能を解析するため、MC3T3-E1細胞のsiRNAノックダウンによる解析を行ったところ、PontinまたはReptinのノックダウンによって細胞の増殖抑制が観察された。現在、メカニカルストレス負荷による繊毛形成への影響について解析を行っている。さらに、骨芽細胞分化時におけるPontin-Reptinの細胞内局在を観察したところ、両者ともに細胞質と核への局在を示し、特にReptinは核小体周辺の局在が見られたことから、Ponti-Reptin複合体とは別の単独の機能が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
骨芽細胞分化過程におけるPontin-Reptinのインタラクトーム解析において免疫沈降実験が必須であったが、抗体の選択が順調に行えたため、解析することができた。メカニカルストレス負荷実験、Pontin-Reptinのノックダウンと免疫染色実験も順調に進んでいる。
今後は、これまでの実験のさらなる解析を進めると共に、骨芽細胞特異的にPontinもしくは、Reptinをノックアウトして、骨における表現型解析を行う。免疫組織学的解析によって、一次繊毛の形態解析を行い、マイクロCTによって三次元的な骨梁構造解析を行う。さらに、過剰咬合実験を行い、歯根部のメカニカルストレス応答の組織学的解析を行う。Pontin-Reptinと新規因子の大腸菌リコンビナントタンパク質を精製し、複合体のin vitro再構築を試みる。さらに、Pontin-Reptinと新規因子の結合特性をBiacoreによって解析する。Pontin-Reptinと新規因子の3次元構造解析を行い、新規因子に対するPontin-Reptinのシャペロン機能を解析する。構造解析については、cryo-EM(超低温電子顕微鏡)解析とX線結晶構造解析の2つのアプローチを採る。低分子化合物によって、複雑な一次繊毛形成機構を制御できれば、そのメカニズム解明のための有用なツールとなり、また、繊毛病治療薬のシード化合物になる可能性もあるため、一次繊毛形成に影響を与える化合物をスクリーニングする。ヒット化合物取得後、MTTアッセイにより毒性評価を行い、中心体・一次繊毛構成タンパク質であるα-,γ-, acetylated-tubulinの免疫染色を行い、繊毛形成のどのステージに影響しているか評価する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Molecular Omics
巻: 14 ページ: 82~94
10.1039/C7MO00142H
Cell Reports
巻: 20 ページ: 2735-2748
10.1016/j.celrep.2017.08.074.
http://www.dent.niigata-u.ac.jp/pharmacology/pharmacology.html