研究課題/領域番号 |
17K11640
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 元 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (10432452)
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研究分担者 |
加藤 隆史 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50367520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 味覚障害 / ドーパミン / パーキンソン病 / 農薬 |
研究実績の概要 |
昨年度は、低濃度ロテノン(0.35mg/kg)を1週間鼻腔内投与したマウスにおける苦味 (キニーネ)感受性の変化、および酪酸に対する忌避行動の変化を調べ、この動物が味覚および嗅覚障害を呈していることを行動学的に明らかにした。今年度は、このモデル動物で観察された味覚障害の病理進展経路について明らかにするため、味覚の中枢経路および黒質/腹側被蓋野におけるThyrosine Hydroxylase (TH)陽性細胞の変化を免疫組織化学的に観察した。その結果、ロテノン1週間鼻腔内投与により、黒質や腹側被蓋野のTH陽性細胞数に変化を認めなかったが、島皮質におけるTH陽性線維の有意な減少と嗅球および孤束核吻側部のTH陽性細胞数の有意な減少を認めた。また、4週間ロテノンを連続投与したマウスにおける黒質および腹側被蓋野のTH陽性細胞数の減少が観察され、さらに、ロータロッドテストを用いてそのマウスの運動機能の変化を観察すると、ロータロッドからの落下時間が対照群マウスに比べて投与2週目以降から有意に減少した。以上の結果から、ロテノン鼻腔内投与マウスでは、ドパミン系の神経変性が進行する過程で味覚や嗅覚障害などの非運動症状が誘発され、このモデル動物がパーキンソン病の非運動症状を調べる実験モデル動物として有用である可能性が示唆された。現在、鼓索神経からのWhole nerve 記録を行い、5基本味、冷刺激および機械刺激に対する神経応答を調べるとともに、マウス嗅粘膜からのElectro olfactogram (EOG)記録を行い、匂い刺激に対する嗅神経細胞の神経応答を調べ、味覚および嗅覚障害への末梢神経系の関与について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、全動物標本の慢性記録実験を行なう予定であった。しかしながら、ロテノン鼻腔内投与マウスで引き起こされた味覚/嗅覚障害における末梢神経系の関与を明らかにするには、鼓索神経からのWhole nerve 記録あるいは嗅粘膜からのElectro olfactogram (EOG)記録を行うことが最適であるため、新たに急性記録実験を立ち上げた。再計画した急性記録実験はすでに準備が整い、現在記録/解析を行っている段階である。一方、味覚/嗅覚障害における中枢神経系の関与を明らかにするためには、当初予定していた慢性記録実験が最適であるが、末梢からの急性記録実験およびこれまで継続して行なってきたモデル動物の病理学的変化について免疫組織化学的手法を用いて検討する作業に時間を要し、慢性記録実験の立ち上げが当初の予定よりもやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新たに立ち上げた急性記録実験については、すでに実験がスタートし、今後も引き続き実験を進めていく予定である。一方、慢性記録実験については、多点の脳波あるいは多点のユニット活動を記録する実験系を確立する作業を現在進めており、今後、モデル動物における嗅覚刺激あるいは味刺激に対する多部位の神経活動を同時記録し、それらの活動の自己及び相互相関を調べる予定である。
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