研究課題
野生型(WT)及びPRIPノックアウト(KO)由来骨髄細胞と骨芽前駆細胞(POB)との共存培養における破骨細胞分化過程で、POBを除いた破骨(前駆)細胞からRNAを精製し、マイクロアレイを行った。その結果、ontology解析では炎症応答に関連する遺伝子の発現変化が大きく、ついで免疫系、骨吸収関連が多かった。また、破骨細胞分化を制御するSemaphorin 3A(Sema3A)の受容体であるNeuropilin 1(Nrp1)の発現が、KOで高かった。Sema3Aは骨芽細胞から分泌され、骨芽細胞には分化促進的に、破骨細胞には分化抑制的に働く。その受容体Nrp1の発現が破骨細胞分化の過程で減少しSema3Aによる抑制を免れることから分化が進むが、KOではあまり減少していなかった。つまり、KOではNrp1の発現量が低下しにくく、POBからのSema3Aを受容して抑制性制御が続くために破骨細胞分化が進行しにくいものと予想された。そこで、まずNrp1の部分ペプチド(Sema3A結合部位)を合成し、単独培養による分化誘導過程で培地中に添加したところ、分化した破骨細胞数がKOで増加した。また、組換えSema3Aを加えたところ、KOで分化が抑制された。KOでは、Sema3A-Nrp1シグナルの下流にあるPLCg2のリン酸化や刺激による細胞内Ca2+濃度の変化が低下していた。Realtime PCRやマイクロアレイの結果から、破骨細胞分化のマスター転写因子NFATc1の発現量は有意差なかったが、その制御下にあるDC-STAMPなど破骨細胞関連遺伝子の発現が低下していた。以上よりPRIP-KOでは、Sema3A-Nrp1シグナルが正常に制御されないため共存培養において破骨細胞分化が進行しにくいことが分かった。また、PRIPはNrp1の遺伝子発現を制御するシグナリングに関わることが示唆された。
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