研究課題
「匂い刺激によって痛みが和らぐ」という、全く新しい大脳皮質嗅覚野-無顆粒島皮質の神経回路を同定し,急性疼痛に加え,慢性疼痛や癌性疼痛に対して革新的な治療法の基盤を確立することを本研究の目標とした。初年度は,チャンネルロドプシン 2 (ChR2)の発現に最適な条件を設定し,スライス標本にて実験を行った。光ファイバーの先端をスライス表面に設置し,ごく短時間の光照射によって,記録するニューロンから光照射誘発性の活動電位が発生した。これらの活動電位発生パターンは,発火特性にて弁別されるニューロンタイプによって差異が生じた。興奮性細胞の興奮応答を強力に抑制をかける高頻度発火型抑制性ニューロンは,光刺激に呼応した活動電位の発火を示した。一方で,複数の興奮性細胞において,それら細胞の発火が著明に抑制されることが示されたことから,梨状皮質近傍に存在する島皮質錐体性細胞は,嗅覚情報によって発火パターンが修飾される可能性を示唆し,これは匂いなどの嗅覚情報によって島皮質に収斂される痛み,味情報,口腔内の情報処理が変わりうるという可能性を示す。また次年度には,扁桃体に微量注入したコレラトキシンB (CTB)によって染色された島皮質錐体細胞の発火を強力に抑制したことから,嗅覚性の情報が,島皮質から扁桃体に入力するインパルスを修飾する可能性を示唆する。これらの可能性は,嗅覚情報が,島皮質に存在する抑制性および興奮性ニューロンの興奮性応答の修飾を介して,情動を司る扁桃体ニューロンの興奮性を修飾する可能性を示唆するものである。
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The Journal of Neuroscience,
巻: 38 ページ: 9814-9828
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0337-18.2018
http://www2.dent.nihon-u.ac.jp/pharmacology/