研究課題
ブラキシズムは、何らかの原因で咀嚼筋が異常に緊張し、咀嚼、嚥下、発語などの機能的運動と無関係に歯を食いしばり、歯ぎしり、噛み合わせる習癖である。ブラキシズムは一般にストレスなど環境要因によっても増悪するが、その発症には遺伝的素因がより強いことが類推されながら、現在まで原因遺伝子はもとより、咀嚼調節異常発生の分子メカニズムについても十分に明らかでない。さらには、遺伝的にブラキシズムを高頻度で発現し有用な治療法を検証するための前臨床段階で利用できるようなモデル動物の報告は無かった。本研究によって、アネキシンA5(Anxa5)の機能欠損マウス(Anxa5-/-)がヒトのブラキシズムと類似した多くの表現型を示すことを見出した。 Anxa5-/-マウスでの、Anxa5-lacZの解析からAnxa5が腱の骨付着部位、骨膜、歯根膜に高い発現を示すことを見出した。両アリルがAnxa5-lacZとなったAnxa5 KOマウスでは、腱の骨付着部位において特異的な骨の肥大化が認められた。とくに、顎顔面領域においては咬筋の下顎骨付着部で骨の肥大化が認められた。歯周組織においては、歯根膜腔拡大や歯根根尖部セメント質吸収などの炎症様像が認められた。さらに、臼歯を解析したところ咬合面の咬耗が認められ、また、口蓋骨における骨隆起が認められた。すなわち、Anxa5 KOマウスでは骨、歯、歯周組織においてヒトに現れる病態に類似した表現型を呈することを見出した。
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