研究課題/領域番号 |
17K11658
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇弘 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (70298545)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスリン / 分泌 / 生物発光 / ルシフェラーゼ / エキソサイトーシス / 3D培養 / イメージング |
研究実績の概要 |
膵島β細胞間の同調性インスリン分泌機構及び糖尿病のインスリン分泌障害は不明な点が多い。本課題では、三次元(3D)培養細胞のタンパク質分泌動態を定量的に可視化できる独自開発の「分泌タンパク質のビデオレート生物発光イメージング法」を用いて、グルコース刺激による同調性インスリン分泌動態とその制御機構を明らかにすることを目的とし、研究を進めた。 ヒトインスリンとガウシアルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase,GLase)の融合タンパク質をレポーターとし、水冷EM-CCDカメラを備えた顕微鏡システムで生物発光イメージングを行い、タンパク質分泌動態を300-500 ms/frameで可視化解析した。Insulin-GLaseを一過性発現させた単離ラット膵島では、高グルコース刺激により膵島表層全体が一斉に同調して周期変動する分泌の発光シグナルが可視化された。ラット膵β細胞株(INS-1E細胞)から新規に樹立したInsulin-GLase定常発現株(iGL細胞)では、三次元(3D)培養したスフェロイドにおいて、単離ラット膵島と同様に、グルコース刺激で細胞集団全体が同調する周期性インスリン分泌が1時間以上観察された。一方グリベンクラミド刺激では、刺激直後から3回程度の同調性インスリン分泌が観察されて徐々に同調性が失われた。iGL細胞は、生物発光イメージング解析に加えて、ルミノメーターを用いた発光測定により簡便にインスリン分泌の相対定量解析が可能であり、細胞密度および細胞培養時間に比例して、インスリン分泌量が増大することが示された。 以上の結果から、生物発光イメージング法により、3D培養細胞におけるタンパク質分泌動態の可視化が可能であり、細胞間接着がインスリン分泌部位の形成および同調性と分泌量の増大に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Insulin-GLaseを一過性発現させたINS-1E細胞の生物発光イメージングでは、インスリン分泌における細胞間の同調性や個々の細胞における周期性がほとんど観察されなかったのに対して、INS-1E細胞から選別を行って樹立したInsulin-GLase定常発現株であるiGL細胞は、グルコース刺激時に同調性インスリン分泌を示した。このように細胞集団で完全に同調した周期性インスリン分泌を簡便に解析可能な細胞株は他に例がなく、iGL細胞は、極めて有用な細胞株であると考えられる。また、本研究成果は、3D培養細胞におけるタンパク質分泌を簡便に定量解析する初めての手法を提供しており、細胞塊(スフェロイド)を扱うことが必須となる再生医療研究など、生理的培養条件として注目されている3D培養細胞を用いた研究に広く応用することが期待できる。以上のことから本研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
二次元(2D)培養のiGL細胞においては、細胞密度に依存して開口分泌が細胞間接着部位に局在化し、多細胞間の同調性と分泌の周期性が高まったが、細胞間接着部位への開口分泌局在化が多細胞間の同調性に必須かどうかは不明なままである。 この点について、細胞外基質(マトリゲル)でコーティングしたディッシュでは、開口分泌部位が細胞外基質接着部位にも局在化することを利用して、同調性と開口分泌部位の関係性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3D培養細胞条件における細胞間で同調したインスリン分泌の可視化について論文発表を行い、この研究成果について積極的に学会発表を行うことに注力したことで、実験量が少なくなり、研究費が残る形となった。次年度使用額については、GLaseを用いた生物発光イメージングとルミノメーター測定解析に重要な、比較的高額となる発光基質の購入に利用する。
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