研究実績の概要 |
グルコース刺激による膵島β細胞の同調した周期性インスリン分泌については未だ不明な点が多い。糖尿病のインスリン分泌障害を理解し、有効な糖尿病治療薬を開発する上では、周期性インスリン分泌を簡便に測定できる細胞解析系(セルベースアッセイ)が必要と考えられる。我々は独自開発の「分泌タンパク質のビデオレート生物発光イメージング法」を用いて、グルコース刺激による細胞塊で同調した周期性インスリン分泌の可視化が可能な発光膵 β 細胞株(iGL 細胞)を樹立した。iGL細胞が定常発現するレポータータンパク質であるヒトインスリンとガウシアルシフェラーゼ(Gaussia Luciferase,GLase)の融合タンパク質(Insulin-GLase)については、生物発光イメージングに加えて、ルミノメーターを用いた簡便なインスリン分泌解析が可能である。培養液に添加する還元剤としてモノチオグリセロールを使用し、マルチウェルプレートを8倍希釈したマトリゲルでコーティングして、高密度でiGL細胞を播種することで、細胞播種から2, 3日後に高い細胞接着性を維持しながら、高いグルコース応答性インスリン分泌を解析できる。このとき、グルコース刺激による誘導率については、ルミノメーターを用いた発光測定法は、抗インスリン抗体を用いたELISA測定法と高い相関性があることを示した。Insulin-GLaseを部分精製した結果、Insulin-GLaseは各種ELISAキットの抗体では認識されず、ELISAではiGL細胞に内因性に発現するラットインスリンのみが検出されると考えられた。
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