研究実績の概要 |
本研究の目的は、上皮ケラチノサイトの上皮-間葉転換(EMT)においてエピジェネティック制御装置(クロマチン修飾および転写因子複合体)がどのように遺伝子発現パターン変化を制御するのか、さらに口腔癌(OSCC)細胞におけるEMT関連遺伝子の発現異常とエピジェネティック制御装置の変異との関連を明らかにすることである。 本年度はこれまでに実施した研究の結果を踏まえて、以下の実験をおこなった。 1. EMTプログラムによる遺伝子発現変化の網羅的解析:TGF-β誘導EMTにおける遺伝子発現変動を把握するため網羅的な解析をおこなった。未処理およびTGF-β処理したHaCaT細胞からtotalRNAを抽出し、DNAマイクロアレイにより網羅的に遺伝子発現変化を解析した。新たにP53INP2, SOX4, FOXQ1, FBXO32, AKAP12, MARCKSL1, CALD1, FBLIM1, GABARAPL1, SGK1などの発現変動を明らかにした。さらにqRT-PCRにより発現変化を定量的に確認した。 2. Tet-onシステムを用いたテトラサイクリン誘導性SNAI2発現HaCaT細胞(Tet-On Ty1-SNAI2細胞)の作製:EMTプログラムにおける転写因子SNAI2の役割を解析するためTet-On Ty1-SNAI2細胞を樹立した。Ty1タグを付加したSNAI2をテトラサイクリン誘導性に発現させるレトロウイルスベクターを作製したのち、組換えレトロウイルスにてHaCaT細胞に感染させて目的遺伝子をゲノムに組み込ませた。さらに薬剤耐性と限界希釈法にて遺伝子導入された細胞をクローン化した。樹立細胞株におけるドキシサイクリン(テトラサイクリン系薬剤)誘導性Ty1-SNAI2発現はqRT-PCRおよびウエスタンブロットにて確認することができた。
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