研究課題/領域番号 |
17K11676
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大西 智和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (30244247)
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研究分担者 |
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10303629)
柿元 協子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (40274849)
楠山 譲二 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (70596105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | T細胞 |
研究実績の概要 |
嫌気性細菌が免疫担当細胞に及ぼすシグナル伝達物質のなかで、JNKの脱リン 酸化酵素であるDUSP16に注目した。そして、T細胞特異的に不活化した遺伝子改変マウス(DUSP16DN-Tg)を作成し、結紮線と歯肉の間に歯周ポケットが形成され細菌叢であるプラークを形成する方法で実験的歯周炎を誘導した。そして、マイクロCTで歯槽骨の吸収状態を測定したところ 、野生型マウスに比べて歯槽骨吸収が著しく抑制されルことが判明した。免疫担当細胞で歯周炎に深く関わっているT細胞のサブセットを解析するため胸腺にあるT細胞に注目したところ、調節性T細胞であるiTregの分化が亢進していることを見 い出した。この現象は、DUSP16によるJNK活性抑制がiTreg分化抑制を介して歯周炎の増悪因子として働く可能性 を示唆する。次に、Th細胞サブセットの推移を 野生型(C57BL/6)とDUSP16DN-Tgマウスに、結紮線による実験的歯周炎を誘導した。実験的歯周炎は、その病期を骨吸収が急激に進行する初期急性期(結紮後3-5日)と緩やかに進行する慢性期 (結紮後3週間)に分類することができるので、それぞれの病期にて歯槽骨吸収の解析、及び 歯周組織の組織学 的に観察そして、単核球を歯肉・歯周組織から抽出しT細胞のサブセットを抗体にて染色した後、フローサイト メトリーにて解析した。そして、Thサイトカイン導入の実験的歯周炎への影響をナノ粒子であるpoly(lactic-co-glycolic) acid (PLGA)に吸 着させる方法が用いて行った。その結果、実験的歯周炎誘発による歯槽骨の吸収が、DUSP16DN-Tgの発現により歯周炎急性期において抑制され、さらに免疫組織化学的及びフローサイトメーターの実験から、iTreg細胞の増加が歯周炎を伴ったDUSP16DN-Tgマウスの歯周組織に減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯周炎は歯周ポケットに存在する嫌気性細菌に対する免疫担当細胞の応答が原因となり、歯肉や歯槽骨などの損傷が起きる疾患である。歯肉炎から歯周炎へ移行する免疫応答のトリガーの一つとして、ブレーキ役であるiTregの分化阻害が考えられる。本研究ではこのiTregに注目し、歯周炎における免疫応答の原因の一つにiTregの分化抑制があると考えた。iTregの分化促進を行う細胞内シグナル伝達物質にJNKがあるが、このJNKを調節しているのがDUSP16である。本研究では、T細胞特異的にDUSP16を阻害したマウスの実験的歯周炎を誘発したところ、JNK活性が亢進した。そして、DUSP16を阻害したマウスの歯周炎を伴う歯周組織において歯周組織の破壊が少なくなり、免疫応答を抑制するiTreg細胞が多くなることを抗FOXP3抗体を用い免疫組織及びフローサイトメーターで明らかにした。そして、DUSP16が関わり急性期のiTreg細胞の減少に関わっていること可能性が示唆された。また、Thサイトカインを埋入させる実験によりiTregの減少を伴う歯槽骨吸収を増加させることが判明した。よって、当初の実験計画はおおむね進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DUSP16が特異的に抑制するJNKがiTreg細胞の分化・機能における役割の解析を以下の方法で行う。 1.Naive CD4+T細胞を野生型またはDUSP16DN―Tgマウスの脾臓から採取し、iTregを含むTh細胞分化のための培養 を行い、分化させたiTreg などについてフローサイトメトリー解析をFOXP3やRorγtに対する抗体を用い行う。特にiTreg細胞分化におけるDUSP16 の必要性をin vitro実験系にて検討する。 2.上記の方法で分化させたiTregを含むTh細胞をマーカー染色後、セルソーターにて細胞を採取する。そしてiTr egまたはTh17細胞活性化のためにそれぞれIL-10またはIL-2にて処理し、機能を制御する転写因子(FoxP3または Rorγt)の発現をリアルタイムRT-PCR法にて観察する。 3. 4DUSP16/JNKシグナルのTh22分化における役割を調べるため、in vitroの実験 として、DUSP16DN―Tgマウスの脾臓から採取したnaive CD4+T細胞のTh22細胞分化を誘導し、その分化マーカー であるAHRの発現レベルを野生型マウスと比較する。
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