研究課題/領域番号 |
17K11679
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
今井 優樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30440936)
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研究分担者 |
太田 里永子 愛知県がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (30452460)
山崎 小百合 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (70567255)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | C5a / 頭頸部癌 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
C5a-C5aRシステムが制御性T細胞への分化および癌組織への制御性T細胞浸潤に関与しているという報告があることから、名古屋市立大学病院の耳鼻咽喉科頭頸部外科グループの協力を経て頭頸部癌のサンプルを得て、腫瘍浸潤リンパ球中の制御性T細胞の比率をフローサイトメーターで検討した。その結果、頭頸部癌の原発腫瘍や頭頸部癌の転移のあるリンパ節おいてFoxp3陽性の制御性T細胞の比率が他のがんと比較して高かった。興味深いことに、頭頸部癌に浸潤した制御性T細胞はかなりの比率で制御性共刺激因子CTLA-4の発現していることを明らかにした。そこで頭頸部癌に浸潤したCD4+T細胞のうちCTLA-4発現制御性T細胞における特徴的な遺伝子発現を明らかにするためトランスクリプトーム解析を行ったところ、増殖関連の遺伝子が特徴的に増加していた。一方、C5a-C5aRシステムが制御性T細胞の分化および癌組織への浸潤に関与しているという報告があることから、制御性T細胞をはじめ、腫瘍浸潤リンパ球におけるC5aRの発現をトランスクリプトーム解析で検討したところ制御性T細胞では発現が低かった。これらの結果から、頭頸部癌において、制御性T細胞が癌の増殖に関与しているが、C5a-C5aRシステムは制御性T細胞の分化および癌組織への浸潤に関与していないことが明らかになった。 今後はがん細胞に発現しているC5aR特異的な阻害抗体の作製し、がん細胞の増殖にC5a-C5aRシステムが関与しているかどうかを解析できるよう実験を計画中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在名古屋市立大学病院の耳鼻咽喉科頭頸部外科グループと共同研究をしているため、頭頸部がんやリンパ節腫脹のある症例において同意を得た後、フレッシュなサンプルを複数例入手することができた。これらのサンプルを用い、フローサイトメーターおよびトランスクリプトーム解析を行った。この実験によりTregの遺伝子の特徴やphenotypeを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、口腔癌細胞株においてC5aRの発現を明らかにし、口腔癌にC5a-C5aRシステムが関与していることを可能性が示唆されたことから、口腔癌細胞にC5aが結合できなくする抗C5aRモノクローナル抗体の作製を試みる。C5aとC5aRの結合に重要な構造はC5aRのN末端アミノ酸30残基であることが明らかにされているため、この部位のペプチドを合成し、キャリアタンパク質であるKLHと結合させた後、アジュバントとともにBALB/Cマウスに免疫する。その後、常法により、ハイブリドーマを作製し、C5aに対して反応性の強い抗体産生コロニーを選別する。選別した抗C5a抗体から、さらにC5a-C5aRシステム阻害する抗体産生ハイブリドーマの選別する。 次にC5a-C5aRシステム阻害抗体産生ハイブリドーマからmRNAを単離し、cDNAを合成後、5’RACE法により増幅した後、クローニングを行い、抗C5a-C5aRシステム阻害抗体の可変領域の遺伝子配列を決定する。この抗体の可変領域と、口腔癌腫瘍特異抗原抗体の可変領域とをリンカーでつなぎ、口腔癌特異的にC5a-C5aRシステムを阻害する二重特異抗体の作製を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒトの腫瘍サンプルを複数例確保できたため、そちらの解析を中心に行ったとともに、研究分担者が所属先を移動し、新所属先の試薬と前年度購入した試薬でまかなえたため。
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