研究課題
1. 正常ボランティア、口腔がん患者及び口腔がんにより舌、顎骨等を切除した患者を対象にCine-MRIを撮像し、嚥下機能の評価を試みた。具体的には、T2強調をベースにしたMR sequencesを用いてCine-MRIを撮像する際、生理食塩水5 mlを経口摂取する状態を経時的に撮像した。更に、手術を行った患者に対し、嚥下訓練を行い、嚥下機能の回復状態についてもCine-MRIを撮像し、機能改善を評価した。正常ボランティアでは嚥下による液体の流動性を全対象者に対して確認することができた。口腔がん患者でも、術前の場合はほぼ全員撮像することに成功し、正常ボランティア同様液体の流動性を確認することが可能であった。手術後の患者さんの中には1回嚥下のみではなく、2回嚥下、3回嚥下を示すものも見られた。加えて、正常者と嚥下機能が低下している患者を比較することにより4つのパラメータ(oral transit times、orovelar opening time、first passavant ridge、tissue immobility score)において両者差異のある可能性を見出した。2. Cine-MRIのsequencesとDynamic MR sialographyのsequencesを融合して、口腔内に5%のクエン酸を滴下後(唾液誘発刺激後)の画像を作成した。その結果、Super Dynamic MR sialographyと命名することは難しいが、舌下腺に対するDynamic MR sialographyの作成に成功した。そのデータを用いてラヌーラの診断におけるバルトリン管の関与の有無を同定することに成功した。今後、更なるsequencesの改良を重ねることで、唾液の流出を画像化することを試みる予定である。
3: やや遅れている
Cine-MRIを用いた嚥下機能評価により正常ボランティアと口腔がん患者及び口腔がんによる舌や顎骨を切除した患者に対する応用も可能であることを確認できた。同時に正常者と嚥下機能が低下している患者を比較することにより4つのパラメータ(oral transit times、orovelar opening time、first passavant ridge、tissue immobility score)において両者差異のある可能性を見出した。このデータに関して国際雑誌にて発表を行った。更に、Super Dynamic MR sialographyの手法による唾液の流出状態の描画はできていないものの、舌下腺に対するDynamic MR sialographyの作成に成功した。その結果、ラヌーラの発症におけるバルトリン菅の関与を評価することを可能にし、国際雑誌に発表した。Functional MRIによる咬合状態の評価に関しては、高齢者のボランティアのデータが取れていないだけではなく、咬合状態が著しく壊れた高齢者に対するデータ取得があまり進んでいない。そのため論文投稿はできているものの全体としてはやや遅れていると判断した。
我々が作成に成功したCine-MRIを臨床応用し、口腔がん患者及び口腔がんに対する手術を行った患者に対しても実施することでデータを蓄積する。更に、口腔がん患者に対して行っている術前及び手術後のMRによる評価時に必ずCine-MRIを追加撮影し、症例数を増やす。その結果、Cine-MRIの臨床的意義を確立して結果の発表に繋げていきたい。併行してSuper Dynamic MR sialographyによる極短時間の撮像において唾液流出の状態を描出し、その画像が意味するものを探求していく。加えて、舌下腺に対するDynamic MR sialographyを臨床応用してバルトリン管の走行や亜型などを明らかにし、ラヌーラの発症に関して解剖学的に解明していきたい。Functional MRIにおける咬合状態の把握について、若年者のボランティアにおけるデータに加えて高齢者や歯周病で咬合状態が不全になった患者を対象として撮像を追加し、基礎データの確立を目指す。次年度の研究費の使用計画平成29年度より開始した研究内容を継続して行い、分析対象者の症例数を蓄積して行く。Cine-MRIに関しては進行が良いため同研究を中心に進めていく。
コロナ禍の中で学会発表が困難であったこと、研究の進行状況、論文作成及び海外の支払いにおける為替の変動等により、金額的に残余が生じた。この分は来年度の研究遂行及び論文発表によって使用する予定である。
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